きみは微糖の毒を吐く



耳に入っただけで心の奥が温かくなるような、大好きな声。

驚いて顔をあげたら、そこには絢斗くんがいた。




「あ、や、」





うまく声にならない声で呼びかけたら、珍しく動揺している絢斗くんの顔が見えた。





「何、どうした?」

「っ、あや、くん」




目の前の彼に、皺のないブレザーをぎゅっと掴んだら、いつもなら振り払われそうなのに、そうされなかった。




「具合悪い?水買ってくる」

「いら、ない」

「いや、飲んだほうがいいだろ」



ぎゅう、とブレザーを握る手に力を込める。



「いらない、から、ここにいて……」



そういった瞬間、堪えていた涙がひとつぶ零れた。

絢斗くんは驚いた顔をしたけれど、わかった、と隣に座ってくれた。




< 48 / 279 >

この作品をシェア

pagetop