きみは微糖の毒を吐く
耳に入っただけで心の奥が温かくなるような、大好きな声。
驚いて顔をあげたら、そこには絢斗くんがいた。
「あ、や、」
うまく声にならない声で呼びかけたら、珍しく動揺している絢斗くんの顔が見えた。
「何、どうした?」
「っ、あや、くん」
目の前の彼に、皺のないブレザーをぎゅっと掴んだら、いつもなら振り払われそうなのに、そうされなかった。
「具合悪い?水買ってくる」
「いら、ない」
「いや、飲んだほうがいいだろ」
ぎゅう、とブレザーを握る手に力を込める。
「いらない、から、ここにいて……」
そういった瞬間、堪えていた涙がひとつぶ零れた。
絢斗くんは驚いた顔をしたけれど、わかった、と隣に座ってくれた。