きみは微糖の毒を吐く
「もう、行く?」
「もう少し休めば」
絢斗くんはそう言うと私の背中に手をまわして、そっとさすってくれた。
ぶっきらぼうな口調と冷たい態度とは正反対の、優しい手。そっと触れるそれは温かくて、安心する。
「人に、見られちゃうよ」
「うるせーよ。彼女じゃなくても看病くらいするだろ」
そうかなぁ。彼女じゃなくても、背中を撫でてくれるかな。
「絢斗くん、なんでここにいるの?」
「……お前がいつまで経っても来ないから」
なんだ、それ。心配して迎えに来てくれたってこと?
絢斗くん、私が来るの待っててくれたの?
少しだけ調子に乗って絢斗くんの肩に頭をのせてみたけれど、今日の絢斗くんは怒らなかった。
思ったよりがっしりした肩にすら、きゅんと心臓が締め付けられる。