きみは微糖の毒を吐く



紗英さんと、絢斗くんだ……。


今は他のモデルさんが撮影中だから休憩なのかな。そう思いながらちらりとその陰をのぞく。2人は私には気づいていない。




「聞いてるって」

「いつになったら私と付き合ってくれるのよ」

「さあ」




余裕たっぷりに微笑む紗英さんと、面倒くさそうな顔をする絢斗くん。




「だって今は彼女いないんでしょ?」

「そうだけど」




その言葉が、胸に刺さる。

そっか、絢斗くん、彼女いないってことになってるんだ。




私と付き合ってることを秘密にしてるのは知ってたけど、存在すらなかったことになってるんだ。


……私って本当に、絢斗くんにとって何なんだろう。

彼女だって思ってるの、もしかして私だけなのかなぁ。





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