きみは微糖の毒を吐く




「……え、絢斗くんもう帰るの!?」





昼休みまで結局プレゼントは渡せなくて、それどころかひと言も話せなくて。


悠里ちゃんとお弁当を食べながらどうしようかと考えていたら、そんな言葉が耳に飛び込んできた。


え、絢斗くん帰るの!?





「そう、撮影2時からだから」

「えー、頑張ってね絢斗くん!」




そんな会話が聞こえてきて、慌てて絢斗くんの方を見たら、荷物をまとめて教室を出ていくところだった。


こんな展開は予想してなかった……!





「いいの?絢斗くんにおめでとうって言わなくて」



目の前でお弁当を食べていた悠里ちゃんが、心配そうな顔をして私を見る。




「あ……うん、あの中に入れないし。」




女の子たちに囲まれて廊下に出て行った絢斗くんの背中を見て、苦笑いする。

悠里ちゃんも「確かにあれはこわいよね」と眉を下げた。



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