きみは微糖の毒を吐く



「でもファンなんだし、おめでとうくらい言ってもいいと思うけどね」




ファン、か。

悠里ちゃんは私と絢斗くんが付き合ってること、知らないもんね。




「また今度でいいよ~」



あはは、と笑ったけれど、誕生日当日におめでとうも言えないなんて、彼女失格だ。


彼女って、絢斗くんも思ってくれてるのかどうかわからないけれど。




……仕事なんだから仕方ない。


私に勇気がなくて話しかけられなかったんだから、仕方ない。


そう言い聞かせるけど、机の横に掛けたままの紙袋を見て、悲しくなる。






……ひと目、会うだけでいいから。


ひと言、伝えるだけでいいから。


そう思って放課後、絢斗くんのマンションの前に来てしまった。どうしても諦められなかったなぁ。



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