きみは微糖の毒を吐く



「……乙葉?」




絢斗くんが家に入ったら、こっそり帰ろう。


そう思っていたのに、突然頭上から降ってきた声に驚いて顔を上げてしまった。




「何してんの、こんなところで」




驚いた顔をしているのは絢斗くんも同じ。

ああ、見つかっちゃった。かっこ悪すぎる。




「あ……の、えっと」




お誕生日おめでとうって、言いにきたの。
プレゼント、渡しにきたの。



その言葉がどうしても言えなくなってしまって、ていうか、なにかひと言でも喋ったら泣いてしまいそうで。





どうしよう、もう逃げて帰りたい……。


なにも答えない私に、絢斗くんも困った顔してる。きっと面倒だって思ってる。

そう思ったらもっと泣きそうになって、こんな自分が本当に嫌で。




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