きみは微糖の毒を吐く
エレベーターで上の階まで上がって、絢斗くんが鍵を開けて。
お邪魔します、と小さく呟いて部屋に入った。
……ああもう、大好きで困る。
振り向かないこの背中も、ソファーに座る怠そうな表情も、ぜんぶが私のツボだ。
「……あの、急にごめんね。迷惑かなって、思ったんだけど」
思ったんだけど、どうしても今日はおめでとうって言いたくて。
だって絢斗くんの特別な日だから。
「いや、別にいーけど」
「お誕生日、おめでとう」
ソファの隣に、少し隙間を開けて離れて座って。絢斗くんの目を見てそう伝えたら、少し不機嫌そうに私を睨む。
「遠くね?」
「そ、そんなことないよ」
「……誕生日、知ってたんだ」
「え?」
知ってるもなにも、1ヶ月前から何をするか考えてたけど。