ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
「うわあ、広いお部屋~」

車を停めてきた楓摩と合流し、ついに今日宿泊する部屋に到着。

ドアを開けると、窓から海が見える和室のお部屋が広がっていた。

「あ!おまんじゅうある!!」

「ママー、これなにー?」

「パパ、荷物どこおく?」

部屋にはしゃぐ女子二人と、冷静に荷物の置き場を考えてくれる柚月。

微笑ましく思いながら、とりあえずは柚月の言う通り荷物をまとめることにした。

「葉月と望笑夏も手伝ってー。」

そう言えば、二人も元気に返事をして部屋の入口に集まってくれる。

「柚月は飲み物冷蔵庫に閉まってもらっていい?葉月は望笑夏と二人で部屋の中に荷物運んでねー。」

子どもたちには小さい荷物を優先して渡して、私は重い荷物を持っていこうかな。

そう思って、一番大きい鞄を持って立った途端……

フラッ

「危ないっ!!」

立ちくらみか、一瞬クラっときて倒れそうになった所を間一髪、楓摩が受け止めてくれる。

「朱鳥、大丈夫?…いっぱい動いたから疲れちゃったかな。荷物運ぶのは俺がやるから、一回中入ろう?」

そう言って、楓摩は私を支え部屋に入り、そのまま一度畳に私を寝かせくれる。

「貧血かな、少し、診察してもいい?」

せっかく、こんな所に来たのにまたこれか……

自分の体の弱さにガッカリしつつも、小さく頷いた。

楓摩は、一応を考えて持ってきていたのか、自分の鞄の中から聴診器や体温計を取り出して診察の準備を進める。

大袈裟だな、なんて少し思ったけど、楓摩は私のためを思ってやってくれているんだろうし、何かあってからじゃ遅いから……

そう少し切ない気持ちになっていると、準備を終えた楓摩と目が合った。

「朱鳥?」

そう言うと、楓摩は一度手に持っていた聴診器を机に置いて、その大きな手を私の頭に置いた。

「ごめんね、こんな所でまで診察、嫌だよね…。」

顔に出ていたのか、と思って少し恥ずかしく思いつつも、まあ図星ではあるので私はコクリと頷きを返す。

すると、楓摩は穏やかな笑みを浮かべて私の頭を撫でた。

「一応、だからね。気にやまなくていいよ。」

私のために、診察してくれるのに、それを嫌に思う私の心まで察してくれて……

「…ありがとう」

そう言うと、楓摩は笑って「どういたしまして」とまた頭を撫でてくれた。
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