ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-

楓摩side

少し早いけれど、押し入れから布団を出し、畳に敷いて朱鳥を寝かせる。

「ごめんね、せっかくの旅行なのに……」

そう言う朱鳥の頭を撫でる。

「何言ってるの、貧血なんだから仕方ないよ。少し休んでたら良くなるだろうから今は休んで明日と夜に備えよう。」

ホテルの部屋に着き、荷物を運んでいる途中、朱鳥が倒れそうになってしまった。

なんとか、俺が受け止め倒れるのは回避できたものの、診察したところ少し貧血の症状が出ていたので一度休憩させることにしたのだ。

朱鳥は当然、少し寂しそうで、子どもたちも不安気な表情をしている。

「大丈夫だよ、俺たちも長旅で疲れてるから少し休んだらみんなで夕ご飯食べよう。」

そう言ってポンポンとリズム良くお腹の当たりを撫でてあげると、朱鳥はやっと落ち着いた表情になって目を瞑った。

「ママ、具合悪い?」

そう聞いてきたのは葉月。

後ろには柚月と望笑夏も心配そうな表情で覗いている。

「大丈夫だよ、少し疲れちゃっただけ。みんなも、プール疲れたでしょ?少し、おやつ食べてゆっくりしよう。」

「はーい」

その提案にみんなはお行儀よく返事して、もう次の時には何のおやつを食べるかを話し合っている。

素直に言うことを聞いてくれてありがたいなと思いつつ、みんながこんなにお行儀が良いのは朱鳥のお陰だな と眠っている朱鳥の顔を見てありがたく感じた。
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