ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
「ご飯、美味しかったね」

「うん!はづアイス食べれてうれしかった!」

「ぼくも」

「のえちゃんも!」

美味しいご飯は沢山あったのに、デザートのアイスしか印象に残ってなさそうな子どもたちの様子に思わず笑ってしまう。

帰りは行きと逆に、柚月と望笑夏が俺と手を繋ぎ、葉月が朱鳥と手を繋いでいるが、朱鳥も面白かったのか空いた片手で口元を抑えて笑っている。

「じゃあ、ご飯食べ終わったら次は温泉だね。」

朱鳥がそう言うと、子どもたちはまた目をキラキラと輝かせる。

「おんせんっ!おんせんっ!」

「楽しみだね。」

そう言って望笑夏の頭を撫でてあげると望笑夏はふにゃっと笑った。

「朱鳥は、お風呂浸かってもいいけど程々にね。もしかしたら、またフラッと来ちゃうかもしれないから。」

「うん。ありがとう。気をつけるね。」

朱鳥は、葉月と望笑夏を見ながら入らないと行けなくなってしまうから、きっとやんちゃな二人のことで忙しくて自分のことを忘れてしまう気がした。

一応、声掛けはしたけどまだ少し不安。

「葉月、望笑夏」

そう呼びかけると、二人は元気に振り向く。

「ママ、また具合悪くなったら大変だからさ、いっぱいお風呂あるけど、入るのは3つまでって約束してくれる?」

「いっぱいはいると、ママ、またぐあいわるい?」

「うん。ふらふらしちゃって危ないから、約束守って欲しいな。」

「わかった!」

しっかりお返事をくれた望笑夏の頭を撫でて、それから葉月にはもう一個お願いをする。

「葉月、もしママが具合悪くなったら、周りの人誰でもいいから『助けて下さい、パパがお医者さんだから呼んで欲しいです』ってお願いできる?」

「助けてって言ったらいいの?」

「うん。それから、出来たらパパを呼んで。」

葉月は少し真剣な顔になってからコクンとしっかり頷いた。

「よろしく頼むね。」

そう言って葉月の頭を撫でると、葉月もニコッと笑ってくれた。
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