ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
「おっはよー楓摩!」
朝っぱらから元気のありあまったうるさい声。
俺は読んでいた本を閉じてカバンにしまった。
「おはよう。…こんな朝早いのに元気だな。」
「ん?だって、今日から遂に研修医じゃん?やっと!やっとだよ!!」
そう言う陽向は子どものように目をキラキラと輝かせている。
「まあね。大学も長かったようで一瞬だったけどな。」
「えーー、長かったの一択でしょ。毎日、勉強勉強勉強勉強~って」
「そういう道を選んだんだからしょうがないだろ。」
「まーね。…でも、だからこそ遂に臨床が始まって嬉しいんだよ!」
そう。今日俺たちがこんな朝早くから待ち合わせをしているのはこのため。
今日から遂に始まる病院での臨床研修。
正直俺も憧れの場所に立てるから楽しみにしていた。
でも、早朝からこんな元気は出てこないけどな。
…まあ、そこが陽向のいい所でもあるんだけど。
指定された病院の最寄り駅から、一緒に病院へ向かう。
「ああ、遂に研修医か…!!わくわくするな!!」
その間も陽向はずっと喋り続ける。
俺はそれに相槌を打ちながら、たまに返して、たまに話を聞いていなくて拗ねられる。
でも、その間合いが何となく心地よくて、大学の時から気付けば隣にいた。
大学の時は、研修医になればこの関係が終わってしまう…とぼんやりと寂しく思っていたが、それは全くの杞憂であった。
お互いに望む配属先が同じなのは知っていたが、なんの偶然か、ローテーションしていくグループまで同じになってしまった。
またこいつと一緒か。
そう思うと、腐れ縁を感じると共に少しだけ安心した。
ま、絶対に口には出さないけど。