ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
「今日から、ローテーションでしばらくうちの科を研修する佐伯くん、清水くん、白井くんだ。しばらくは、色々見学と簡単な雑務をしてもらうつもりだから、みんなよろしく頼む。じゃあ、挨拶。」

俺らの最初の研修先は小児科だった。

朝礼で小児科部長から短く紹介の時間を頂く。

「佐伯 陽向です。元々、小児科希望で来ました。体力には自信があります。よろしくお願いします。」

パラパラと聞こえる拍手が止む頃に、口を開く。

「清水 楓摩です。僕も、小児科希望で来ました。一生懸命、沢山の事を学ばせていただき吸収していきたいと思っています。よろしくお願いします。」

再びちらほらと拍手が聞こえ、俺の番が終わる。

次は、俺も陽向も初対面の人だっけ…

「白井 北斗です。麻酔科希望です。よろしくお願いします。」

いかにも棒読みなセリフに少し驚いてしまう。

麻酔科希望ってことは、あまり小児には興味がないのかな…

いかにもな仏頂面で少し取っ付きにくそうだ。

そうこうしているうちに、朝礼が終わって他の先生方はそれぞれ自分の持ち場へ散っていく。

俺ら3人と、小児科部長それともう1人背の高い先生。

「今日は初日だから、とりあえずこの先生について回って業務の見学と、基本的な機器の使い方を学んできて。よろしく頼むよ。」

そう言うと、部長はさっさと医局を出ていってしまう。

残された、背の高い先生はめんどくさそうに頭を搔く。

「あー、染谷 宏樹です。よろしく。…今日はとりあえず、部長の言うように俺について回ってくれたらいいから。わからないことがあったら逐一聞いていいから、とりあえず基本の機器、電子カルテとか の使い方を覚えて。それ知らないと、何も出来ないからさ。じゃあ、よろしくな。」

先生は気だるそうにそう言うと、手招きをして歩き出す。
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