ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
染谷先生は、男の子に近付くとニッコリ微笑んで男の子の頭を撫でた。

「いい子だ。良く頑張ったな。あとは、痛いことないから、もう少しだけ検査頑張ろうな。」

「…うぅ、ヒック……けんさ、いやあ…」

「うん、うん。嫌だよな。ごめんな。寝てたらすぐに終わるからな。」

看護師さんに抱っこされた男の子は、薬の影響で段々とうつらうつらとしていく。

男の子の意識が朦朧としてきたのを確認して、看護師さんが男の子を処置室のベッドに寝かせた。

こんな小さい体で頑張っているんだな…と思うと少し切ない気持ちになる。

「清水、なにボーッとしてんだ。さっさと検査終わらせるぞ。」

「はい。」

染谷先生の手つきはテキパキとしていて、無駄な動きがない。

エコー検査が始まって、モニターに体内の様子が映し出される。

正直、まだ全て理解できない。

でも、理解できないことが悔しくてメモを取る。

数年後に、自分がこのような姿になれているのか少し不安になる。

その時、

「んぅ…ん……」

「清水、手握ってやって。」

「あ、はいっ」

麻酔を入れている訳では無いので完全に眠ってしまうわけではない。

あくまで朦朧とするだけ。

だから、少し意識が戻ってしまうことがある。

小さい子にとって、検査はとても怖いと思う。

この歳の子なら親と離れるだけで寂しいし、怖いだろう。

それに加え、知らない大人に囲まれて痛いこともされたりして、どれだけの不安か測りきれない。

「大丈夫だよ、動いたら危ないからね」

優しく声をかけながら手を握る。

小さな手が汗で湿っていて、不安が伝わってくる。
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