ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
検査が終わり、看護師さんが処置室の外で待っていた男の子のお母さんを呼ぶ。

後片付けをしながら、横目で見ると男の子はギューッとお母さんに抱きついていた。

小児科において患者の保護者の存在は欠かせない。

子どもは、大人と比べて痛みや恐怖に弱い。

大人なら何でもない処置や検査でも、泣き喚き暴れてしまう子もいる。

でも、大抵の子はお母さんやお父さんと居ることで平常時よりも安心することができるのだ。

それだけ、小さな子にとって親という存在は大切で、なくてはならないものだと改めて認識した。



「清水、もう昼だから休憩とってこい。午後は研修医まとめて病棟の方の説明したいから3人で行動してくれると助かる。」

「はい、わかりました。」

検査の諸々の片付けや手続きが終わったあと、染谷先生に言われて時計を見るともう12時を回っていた。

午前の外来は終わりだから、多分陽向と白井くんも同じ指示を出されているだろう。

そう考えながら医局に戻ると、案の定二人が既に待っていた。

「お、楓摩お疲れ~。休憩の話聞いた?まとめて動けって。下に食堂あったから行かねえ?」

「うん。そうする。白井くんもそれでいい?」

「…ああ。」

相変わらず素っ気ないなあと思いつつ目を向けると、白井くんは休憩時間にも関わらず分厚い医学書を読んでいた。

「じゃ、行きますか。」
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