ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
病院の1回、ロビーを左に進んだところに食堂がある。

外来患者さんが帰りに寄ったり、入院患者さんとお見舞いのお客さんが喋るために座っていたり、もちろん俺らみたいに休憩中の医師や看護師、薬剤師なども居たりして賑やかな様子だ。

陽向は何を食べようかと、メニューを眺めて何にするか決めかねているようで、白井くんはもう決めたのか、また分厚い医学書を取り出して読んでいる。

「食券まとめて買っちゃうから何にするか教えて。」

「んーーー、楓摩何にすんの?」

「俺はB定食かな。」

B定食は、焼き魚の和食定食だ。

「えー、俺A定かB定か迷ってんだよね。楓摩がB定にすんなら俺A定にすっかなー。」

A定食は、豚のしょうが焼き定食。

このふたつは日替わりで変わるようだ。

「りょーかい。白井くんは?」

「…いらない。」

「えっ」

「腹減ってないから要らない。」

…いくらお腹が空いていないとしても、これから夜まであって何時に終わるかわからないんだから、何も食べないとさすがにお腹が空くだろう。

「今腹減ってなくても、後々減るぞ?食べとけって。」

陽向もそう言ってくれる。

「……はあ………お節介かよ。」

「は?」

「…………なんでもない。蕎麦で。」

「…了解。」

ギスギスしそうな空気を感じて思わず苦笑い。

クールな表情を変えない白井くんに対して、陽向は助言に文句を言われたからか拗ねた表情をしている。

そんな陽向の肩をつついてから、食券を買う列に並んだ。
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