ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
それから数日経っても、白井くんとの間はギスギスしたままだった。

俺が…というよりは、陽向が だけど。

流石に、現場では私情を弁えてあまりその空気感を出さないが、一緒に休憩に入ったりすると、それはもう酷かった。

白井くんの棘のある…、いや棘しかない発言に陽向はいちいち切れてかかるし、それを煽るようにさらに白井くんが何か言うし、一言で言うと最悪。

騒ぎすぎると、他の人に睨まれるので、2人を宥めるのに一苦労だった。





そんなある日。

朝、いつものように陽向と一緒に出勤して更衣室でスクラブに着替えていると、いつもは俺らよりもずっと早く来ているはずの白井くんが遅れてきた。

「おはよう。」

「…………」

一応挨拶するも、まあ返事はない。

いつもの事だから、さほど気にせずに用意を進めていると、突然ガタッと音がした。

見ると、白井くんがロッカーに手をついている。

「……すまん。よろついただけだ。」

「大丈夫?」

「…ああ。」

久しぶりに棘のない発言に驚きつつも、白井くんの顔色が少し悪いように見えた。

「楓摩、行こ。」

「え、ああ、うん。」

そう思っていると、白井くんが来たことで少しまたピリついている陽向がさっさと出ていこうとする。

俺も、急いでペンをポケットに入れて更衣室を出た。
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