ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
数時間、立ちっぱなしで集中するのは予想以上に体力がいる。

足は痛くなってくるし、メモをとる腕も痛い。

でも、術者である先生方や看護師さんはそれ以上だろうと思うと、身が引き締まる思いがした。

いよいよ手術も佳境に入り、手術室全体の緊張感が高まる。

ただでさえ難しい脳の分野だ。

さらに小児となれば、大人よりも小さく技術もより高度なものが求められる。

と同時に、麻酔もまた高度な技術が必要となる。

色々な面において、大人よりもずっと難易度の高い手術だ。

先生方から看護師さんまで、その難易度に対応出来るプロが揃っている。

それでも、少しでも気を抜けば死に直結するような作業が数時間にも及ぶのだ。


と、ふと視界の端に何かが写った。

見ると、ふらふらとして真っ赤な顔をした白井くん。

「っ…大丈夫?」

大声を出して、集中力を削ぐわけにはいかないため小声で声をかける。

朝から具合悪そうだったけど、これ完全に熱出てるだろ…

真っ直ぐ立つのも難しそうだし、かなりの高熱か?

息も荒く、マスクが苦しそうだ。

……このまま見学は続けられないよな…

まだこの後も数時間かかるし、万が一ここで倒れたら先生方に迷惑をかけてしまう。
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