ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
何をするにしても兄と比べられる。

外を歩くだけで、顔見知り程度の近所の人に兄の話題を振られる。

兄と同等に期待される。

"お兄ちゃんみたいになれたらいいね"

みんな口を揃えてそう言う。

俺だって、なんでも出来る兄はカッコイイし羨ましいと思う。

……でも、俺がいくら努力したところで、いつも兄には及ばなかった。

"お前には美術の才能はないから音楽をやれ"

そう言われて小さな頃からピアノとバイオリンをやらされてきたけど、結局大会はいつも県内止まり。

いつの間にか、兄の存在は俺の中の大きなコンプレックスのひとつになっていた。

兄ほど出来ないから、中学高校は地元から少し離れた私立の一貫の男子校に通わされた。

そこの学校は、年に何人も医学部や兄の通う大学への合格者が出る所だった。

地元の小学校ではトップの成績でも、そこの学校ではほとんど底辺だった。

そこから俺は、文字通り血のにじむような努力をし続けた。

…でも、いくら努力をしても俺は所詮凡人で、結局学年に数人いる根っからの頭の良い奴には適わなかった。

母は、俺のテストが帰ってくる度毎回激昂した。

"なんでこんな点数しか取れないの"

"なんで学年で1位を取ることもできないの"

"お兄ちゃんは出来たのに"

母さんの口癖だった。

その頃から、体調を崩すことが増えた。

大きなテストや大会、発表が近づいてくるといつも酷い腹痛に襲われる。

それでも、勉強も練習もし続けなきゃまた怒られるからやらなきゃいけない。

でも当日が近づくにつれ、体調はさらに酷くなるばかりで、テスト前はほぼ毎日のように吐いていた。

吐いてることがバレたらまた怒られるから、親に気付かれないように気を遣いまたそれも大きなストレスだった。
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