ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
でも、そんな俺のことを気遣ってくれる人が1人だけいた。

皮肉にも兄だった。

兄だけが、大きなテストが近付く度に俺が体調を崩すことを知っていた。

夜中にこっそり吐いている時も、兄だけがそっと背中を摩ってくれた。

兄は本当に優しかった。

母は兄の言うことは素直に聞くから、兄が俺が体調を崩しているから休ませてやって欲しいと言うと、母は渋々休ませてくれた。

俺がベッドで横になっている時看病してくれるのもやはり兄だった。

いくら辛くても苦しくても、やっぱり兄を嫌いになることだけはできなかった。

兄のせいで、こんなに悩まされているのに、兄のおかげで気持ちが少し楽になった。

本当に複雑な感情だった。



でも、俺の体調不良は酷くなるばかりだった。

高校に入ってからはテストだけでなく模試の回数が増え、毎回胃に穴が空きそうだった。

テストが怖くて模試が怖くて、いつの間にか学校が怖くなっていた。

学校につくと、いつも足がすくんで震える。

でも、親にバレたら怖いから頑張って教室まで重い体を運んだ。

怖いのを悟られないように強い言葉で防衛した。

上手くできそうにない日はエナジードリンクを飲んで体を鼓舞した。

そうすると、少し頭が覚醒して上手く立ち回れる。



俺の心と体は限界に近かった。
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