ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
そんなある日、俺はとうとうやらかしてしまった。



それは、偉い大学の教授たちも来るような学内での大きな研究発表会の日だった。

その発表会の出来で大学への推薦も決まる一大イベント。

偉い先生方だけでなく、保護者もくる。

つまり、母さんも来る。

俺はこの日のために、1年もかけて準備をしてきた。

誰よりも誰よりも努力をした自信がある。

学校の先生にはお墨付きをもらった。

"ここまで細かく詰めてきたのはお前だけだよ"って。

"本番ひどいやらかしをしない限り必ず推薦はお前のものになるよ"って。

その言葉は、応援になると同時に大きなプレッシャーにもなった。

学内での推薦が決まる大きなイベント、大学から教授もくる、母さんの目もある、先生からの期待もある

やらなきゃ

やらなきゃ

やらなきゃ

大丈夫、俺は誰よりも頑張ってきたんだ、何回も何回も練習した、昨日だって深夜までシュミレーションを繰り返して完璧に仕上げてきた、腹痛の鎮痛剤も飲んできた、大丈夫、今日の俺は完璧だ。

そう言い聞かせた。






「次の発表は2年A組 白井 北斗さん タイトルは____」

名前が呼ばれた。

大丈夫、俺ならできる。

練習通りにやればいいだけ。

大丈夫、大丈夫。

そう言い聞かせながらステージへと繋がる階段を上る。

紹介アナウンスが終わり、スクリーンに俺のスライドが映し出される。

大丈夫、深呼吸して_________






前を向いた瞬間頭の中が真っ白になった。

見渡す限り人、人、人

みんな俺に注目している。

「あ…………」

言葉が詰まって出てこない

ダメだ、挨拶をしてタイトルを言わなきゃ

研究内容と、研究手法と、考察と結果と……

なんだっけ、最初のセリフ、なんだっけ……

言わなきゃ、失敗は許されない、だってこれは大きな大会で、偉い先生方も見ていて、母さんも見ていて、先生からの期待もあって

慌てて原稿を見た、何度も何度も繰り返し練習したせいでボロボロになったいくつもの書き込みのされた原稿。

「あ、う……あ…………」

違う、違う、ちゃんと言わなきゃ、大丈夫だって大丈夫だって

その時

突然目の前がぐわんと歪んだ

急に足元の感覚がなくなって立っているのかもわからなくなって



あれ、俺、なんで天井見てるんだ?

頭が、背中が、おしりが痛い

あれ、発表は?

俺の、発表、どうしたんだっけ

先生の声が聞こえる、生徒の悲鳴が聞こえる、あれ、俺……



そこで俺の意識は途絶えた。
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