ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
「なんでこんなことになるの!毎回毎回!もううんざり!」

「母さん…、そんなこと言ったって北斗も体調が悪かったんだよ、仕方がないだろ。」

「だって、今日は学内推薦を決める発表だったのよ?あの子は頭が悪いからこれが最後のチャンスだったの!」

「そんなこと言うなよ…。北斗だって頑張ってるんだ、母さんも夜中まで北斗が練習していたのはわかってるだろ?本番のアクシデントは仕方ないよ、北斗だってやりたかっただろうに、悔しがってると思うよ。それに最後のチャンスなんてこともないよ。」

「あなたは頭がいいから安心して任せられるの、でもこの子は頭が良くないから、あなたみたいに信用できないのよ。わかるでしょう?この子はできない側の人間なの、今日のでハッキリと確信したわ。」

「………もう、わかったから、母さんも疲れてるだろうから先に帰ってなよ。最近もずっと忙しかっただろ?北斗のことは俺が看てるから、任せて。」

「……あなたがそう言うなら、そうするわ。私も少し、疲れちゃった。」

「うん。お疲れ様。また、明日。気をつけて。」





聞きたくない会話がやっと終わると、シャッとカーテンが開く音がして兄さんが俺のベッドの横に座ったのがわかった。

俺は今まで閉じていた目をゆっくり開ける。

兄さんと目が合うと、兄さんは驚いたような表情をしてからすぐに心配そうな顔になって俺の手を握った。

「北斗、大丈夫か?…倒れたんだって?……また、無理したのか?」

俺は両方の質問に返す意味で小さく頷いた。

「…疲労と、ストレス、あと睡眠不足だって。クマもすごいし、また遅くまで頑張ってたのか?」

その質問には、すぐには頷けなかった。

"頑張る"ことができたか自信がなかったからだ。

自分を追い詰めてやることはやった。

……でも結果的には最悪の結末になってしまったわけだし、これは"頑張れた"には入らないのかもしれない。






悔しかった。

また、ヘマをしてしまった。

しかも、一番大切な行事で。

一番、やらかしちゃいけないとこで。

今までの努力を全部、水の泡にしてしまった。

隙間時間を使い切り睡眠時間を削り、毎日毎日血のにじむ思いで作り上げてきたものを

結局、最後の最後で壊してしまった。

母さんの言う通りだ。

俺はやっぱりどれだけ頑張ってもできない人間なのかもしれない。

悔しくて、自分のできなさに嫌気がさして両の眼から水が滴り落ちた。

「……大丈夫だよ、俺は北斗の頑張り、知ってるからね。少し、自分を追い込みすぎちゃったんだね、北斗は頑張り屋さんだから。」

その暖かい言葉が今は逆に辛かった。

むしろ、否定して欲しかった。

どれだけやってもできない俺はやっぱりダメな人間なのかもしれない。

母さんにしたら、迷惑な子どもだったかもしれない。

"優秀な医師"の家系に傷をつけてしまったかもしれない。

やっぱり俺はいらない子だったのかな。

兄さんみたいにできなくてごめんなさい。

上手く出来なくてごめんなさい。

迷惑ばかりかけてごめんなさい。

本当に申し訳ない。

母さんに、父さんに、兄さんに、先生方に、、、

本当にこんな俺でごめんなさい。

みんなの期待に添えなくてごめんなさい。

もういっそこんな俺を罵ってください。

甘んじて受け入れるから。

そうじゃなきゃ罪悪感に押しつぶされてしまいそうだった。
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