ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
「……くと、北斗」

……ゆっくり目を開けると、低い天井。

また仮眠室の二段ベッドの下で寝ていたようだ。

あれ、俺を呼んだのは……

「……兄さん?…なんで……」

「染谷先生から連絡もらったんだよ。北斗が熱出して1人では帰れそうにないから迎えに来てやってくれって。」

「そんな……、俺こんな年なのに…、…………すいません…」

「いいって。てか、そんなに改まるなよ。ほら、帰ろう?」

……コクン

こんな年にもなって熱出してお迎え……

恥ずかしすぎるし、情けなすぎる……

ああ、最悪だ

今日は本当についていない……

なんで、こんな……

少しでも自分のプライドを守るために俺は急いで起き上がって身なりを整える。

でも、またそこでも熱のせいでふらついてしまって兄さんに助けられる。

やめてくれ…もう俺はいい大人なんだ……

これ以上、俺に惨めな思いをさせないでくれ……

俺はもうとにかく急いで逃げ出すように医局、病院を出た。

「ちょっと、北斗!まって!」

「迷惑かけたのは申し訳ない、でも俺はもう大丈夫だから帰らせてくれ。」

「そんなフラフラでどこが大丈夫なんだよ!そのまま帰ったらまた倒れるって」

「大丈夫だから!お願いだから、もう帰らせてくれよ…」

なんでこんなに構うんだよ……

染谷先生に頼まれたからか?

俺がまた情けないことしたって?

体調管理もろくに出来ず周りに迷惑かけるようなクソだからって??

俺だって必死で…必死で必死で必死でっ……!!

「…なんでだよ……なんで俺ばっかり……」

くそ…体が熱い……視界がぐらつく……

また倒れるのか?

くそっ、くそっ……

もっと動けよ俺の体っ!!

なんでこんなっ

俺の願いも虚しく、駐車場に着く手前で俺はふらつきから地面に膝を着いてしまう。

「北斗っ!」

一番嫌だったのに、兄さんは俺に駆け寄ってきて俺の肩を支える。

「…ほら、やっぱり。」

「……なんだよ、兄さんまで俺が惨めだって言いたいのかよ…。やめてくれよ……もう、そっとしておいてくれ…俺は今日はもう、無理なんだ……」

「……なら、なおさら放っておけないよ。ほら、いいから車乗りな。家まで送ってあげるから。」

もう抵抗するのも、余計に虚しさを増すばかりな気がして俺は黙って兄さんの指示に従って車の助手席に乗り込んだ。
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