ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
「北斗っ!!」

肩を揺さぶられ、不意に我に返る。

「北斗、息、落ち着けて。」

あれ、俺いつの間に過呼吸……

ああ、苦しいな……

頭、痛い……

吐く事に集中しなきゃいけないのに、上手くできないや……

視界がぼやけている

頬に冷たいものが何粒も何粒も伝う

あれ、俺また泣いてんの?

大人気もなくまた泣いちゃってんの?

恥ずかしいな、惨めだな…俺

「北斗、北斗しっかり!!俺のリズムに合わせて息するんだよ。ほら、大丈夫。吸って…吐いて……」

俺、子どもじゃないのに……

兄さんに抱きしめられて、背中撫でられて…

恥ずかしい……

でも、なんだか兄さん、暖かくて……

昔を思い出す

いつも、苦しい時に看病してくれた兄さんを思い出す。

兄さんはいつも暖かくて、優しくて

めんどくさいはずなのに、そんな素振りも見せずずっとニコニコ笑って俺の傍に居てくれる兄さんがたまらなく大好きで……

「っ…兄さんっ……兄さんっ」

「うん。どうした、どうした。」

「兄さんっ……苦しいよっ………」

「うん。苦しいね。でも大丈夫だよ。俺がいるからね。ほら、ゆっくり息して。大丈夫。大丈夫。」

兄さんの背中を撫でるリズムが懐かしくて心地良い。

兄さんの大きい手が暖かくて安心する。

ああ、俺、強がってるくせに、やっぱりまだ子どもだなあって

兄さんの前では、強がってもいつまで経っても弟で

やっぱり兄さんには、敵わないや……
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