ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-

これから

それから3ヶ月間、俺は兄さんの勧めで研修を一時休止、体調が戻るまで自宅療養をすることになった。

療養期間中、勉強は一切禁止された。

理由としては、まずは体を治すことを優先させるためらしい。

最初は、勉強できないこと、皆と同じように病棟で研修を積めないことに酷く罪悪感を覚え、自己嫌悪に陥った。

"本当に自分はこのままでいいのか" "また俺だけ置いていかれてしまうのではないか" "皆と同じように出来ないことを叱られるのではないか"そんな不安が頭から離れなかった。

そんな不安たちは、俺にとって大きなストレスで、休みを貰ってからの数週間は、休む前よりも不眠も体調も悪くなった。

不安で眠れない、薬で眠っても悪夢を見る、起きても吐き気と倦怠感で布団から出られない、そんな日々が続いた。

毎日が怖かった、心も体もずっと辛くて毎日泣いて、最後には"死"を考えるまでに俺は追い詰められた。

でも



結局最後まで俺を支えてくれたのは、やっぱり兄さんだった。

兄さんは精神科医として、俺の主治医にとなり甲斐甲斐しく治療と世話をしてくれた。

そして、時には兄として、俺の話を受け止め聞いてくれた。

その結果、俺は1ヶ月経つ頃にはだいぶ体調も心も改善していた。

あとから知った話だが、俺はある種強迫性障害のようなものになっていたらしい。

母さんからの圧力とそのストレスで"勉強をしない"ことに罪悪感を覚えるようになっていた。

周りとの関係性がどうなろうと、自分の体がどうなろうと、認められるためただ勉強を続けた。

今になって思えば、あの頃の俺は、毎日がいっぱいいっぱいだった。

……それが、同期や先輩に酷い態度を取ってしまったことの言い訳にはならないのは分かっている…

でも、そんなことを考える余裕もなくらい、あの頃は追い詰められていた。

今思えば本当に酷いやつだったと思う。

自分にかかるストレスを人にぶつけ、八つ当たりのように嫌味ばかり口にしていた。

だからこそ、体調が回復し、研修に戻れるようになった時、同期の二人には合わせる顔がなかった。
< 58 / 67 >

この作品をシェア

pagetop