ある雪の降る日私は運命の恋をする-short stories-
「本当に、本当に……ごめんっ!!謝って許されることじゃないのはわかってる。距離を置かれるのも仕方ないってわかってる。…でも、どうしても、謝りたくて……。あの時は…本当にごめんなさい。……二人に何度も嫌な思いさせた。本当に、ごめん……」

怖くて声が震える

頭を上げられない

次に続く言葉がどんな言葉か、なんなら言葉すらかけて貰えないんじゃないかって…、自分勝手に不安に思う。

本当に勝手なやつだなと、つくづく自分が嫌になった。

自分の心臓の鼓動だけがやけにうるさく響く静寂を

切り裂いたのは佐伯の声だった。

「自分勝手にも程があるだろ」

「おい、陽向…」

わかってはいたけど、心を鋭く貫く言葉とそれを咎めるような声

自分の弱さが悔しくて、情けなくて唇を噛んだ。






「…なーんてね」

「えっ?」

驚いて思わず顔を上げてしまった。

そこには呆れたような表情の二人。

「陽向、性格悪いぞ」

「いいじゃん、ちょっとした仕返しだよ。」

えいっと言って、そのまま佐伯は顔を上げた俺の額にデコピンを繰り出した。

パチンと軽い音が部屋に響いた。

「あのさー、お前ほんと無理しすぎ。馬鹿だなー、あんなになるまで自分追い詰めるとか。生きるの下手か?もっと楽に生きよーぜ」

「お前は楽観的すぎるけどな。……まあ、でも、言いたいことはわからなくもない。もう少し気抜いて生きてもバチは当たらないと思うよ。」

そう言って笑う二人の言葉は、すごく、暖かくて……

こんな俺、許してもらえることすら奇跡なのに……

「おいおい、泣くなよー!さては、泣き虫か?」

「っ、二人とも、ほんと、ありがとうっ」

「はいはい、わかったから。もういいよ。泣くな。」

「うんっ」

俺、こんなに泣き虫だったっけ……

情けない、大人気ない




けど

やっと、本来の自分を

取り戻せた気がした。
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