【短】綺麗なアイじゃないから…。
そうして、漸く「好きだ」と言う言葉を貰えた時、私は嬉しさのあまりボロボロと涙を流して、その涙を彼はキスで掬い取った。
何をするにも慎重派な彼は、私の動向を見極めてから、きちんと想いを伝えたかったらしく、分かりやすい私の気持ちなんて、手に取るように知っていたらしい。
嬉しかった。
そう、何もかもが薔薇色に染まったかのように幸福に満ち溢れていて、幸せだったんだ。
でも、剣道部に所属している彼と演劇部の幽霊部員な私とでは、なかなか時間が合わずにいて、朝の通学と、お昼休みの数分が私達の大切な時間になっていた。
ただ、元々フェミニストな彼に対して、あの手この手で気を引こうとする女の子が増え、彼の態度に勘違いを起こす子も跡を絶たず、彼女というポジションである私への風当たりは当然強くなり、私の中でモヤモヤする物がどんどん大きくなっていった。
そんなある日のこと。
今日こそは一緒に帰りたいなと思い、彼のいるだろう生徒会室の扉を開こうとして、その少しだけ開いていた隙間から見えた光景に、そして展開に、私は動けずに固まった。
「好き…」
彼の胸元に頬を寄せて、何度もそう言って泣いているヒト。
そのヒトの髪を何も言わずにただ撫でている彼。
喉の奥が妬けるように涸れて、私は何も言わずにその場を静かに走り去った。
なんでこんな想いしなきゃなんないんだろう。
声を掛けてきたのも、告白してきたのも、向こうの方なのに。
付き合い始めてから約1ヶ月くらいしか経っていないけれど…。
部活で忙しいって言われて、デートも一緒に帰るのも我慢してたのに。
偶然見てしまった光景。
あの意味はなんだったの?
私は貴方の彼女じゃないの?
そう思ったら、思いと一緒に冷めてしまった、冷たい涙が頬を伝わらずに地面に次から次へと落ちていった。
何も喧嘩別れがしたい訳じゃない。
一言だけ、彼からの言葉が欲しいだけなのに…。
その日、彼から連絡が来ることはなかった。
一度生まれると猜疑心は深さを増すばかり。
私は、彼と一緒にいることがどんどん辛くなっていく。
「なぎさ…?」
「……え?」
「ここんとこなんか変だけど…どうした?」
「んーん…なんでもない」
減っていく、会話。
擦り切れる、心。
私は、彼に伝えなければならない2つの気持ちの間で揺れていた。
そこで、ぐっと口唇を噛み締めて…揺れる想いの片方を彼に告げて、私は自分の心を解放しようと、そう思った。
呼び出したのは誰もいない屋上。
「何?こんなとこにいきなり呼び出して?」
「…単刀直入に、簡潔に言うね?」
「ん?」
「別れよう、私たち」
「は?……なんで?!」
「理由が分かんないんなら、自分の胸に聞いてみれば?じゃあね!」
「なっちょっ…待てよ!」
カンカンカン…。
すとん。
「…っばか」
私は、彼を呼び出した屋上から飛び出して、そのまま全速力で走り続け、古い体育館のギャラリーへと続く鉄の階段を上り詰めて、その場所にしゃがみ込み、悔し涙をぽろぽろと零した。
何をするにも慎重派な彼は、私の動向を見極めてから、きちんと想いを伝えたかったらしく、分かりやすい私の気持ちなんて、手に取るように知っていたらしい。
嬉しかった。
そう、何もかもが薔薇色に染まったかのように幸福に満ち溢れていて、幸せだったんだ。
でも、剣道部に所属している彼と演劇部の幽霊部員な私とでは、なかなか時間が合わずにいて、朝の通学と、お昼休みの数分が私達の大切な時間になっていた。
ただ、元々フェミニストな彼に対して、あの手この手で気を引こうとする女の子が増え、彼の態度に勘違いを起こす子も跡を絶たず、彼女というポジションである私への風当たりは当然強くなり、私の中でモヤモヤする物がどんどん大きくなっていった。
そんなある日のこと。
今日こそは一緒に帰りたいなと思い、彼のいるだろう生徒会室の扉を開こうとして、その少しだけ開いていた隙間から見えた光景に、そして展開に、私は動けずに固まった。
「好き…」
彼の胸元に頬を寄せて、何度もそう言って泣いているヒト。
そのヒトの髪を何も言わずにただ撫でている彼。
喉の奥が妬けるように涸れて、私は何も言わずにその場を静かに走り去った。
なんでこんな想いしなきゃなんないんだろう。
声を掛けてきたのも、告白してきたのも、向こうの方なのに。
付き合い始めてから約1ヶ月くらいしか経っていないけれど…。
部活で忙しいって言われて、デートも一緒に帰るのも我慢してたのに。
偶然見てしまった光景。
あの意味はなんだったの?
私は貴方の彼女じゃないの?
そう思ったら、思いと一緒に冷めてしまった、冷たい涙が頬を伝わらずに地面に次から次へと落ちていった。
何も喧嘩別れがしたい訳じゃない。
一言だけ、彼からの言葉が欲しいだけなのに…。
その日、彼から連絡が来ることはなかった。
一度生まれると猜疑心は深さを増すばかり。
私は、彼と一緒にいることがどんどん辛くなっていく。
「なぎさ…?」
「……え?」
「ここんとこなんか変だけど…どうした?」
「んーん…なんでもない」
減っていく、会話。
擦り切れる、心。
私は、彼に伝えなければならない2つの気持ちの間で揺れていた。
そこで、ぐっと口唇を噛み締めて…揺れる想いの片方を彼に告げて、私は自分の心を解放しようと、そう思った。
呼び出したのは誰もいない屋上。
「何?こんなとこにいきなり呼び出して?」
「…単刀直入に、簡潔に言うね?」
「ん?」
「別れよう、私たち」
「は?……なんで?!」
「理由が分かんないんなら、自分の胸に聞いてみれば?じゃあね!」
「なっちょっ…待てよ!」
カンカンカン…。
すとん。
「…っばか」
私は、彼を呼び出した屋上から飛び出して、そのまま全速力で走り続け、古い体育館のギャラリーへと続く鉄の階段を上り詰めて、その場所にしゃがみ込み、悔し涙をぽろぽろと零した。