御曹司の恋の行方~和菓子王子編~
ガタッと少しずつ距離をつめる美穂。

「夕輝さん、好きなんです!」

曖昧にするのは良くないが、思い詰めた様子に刺激するのも良くないだろう…

扉の方を見ると、少し開いている。親父が来たのだろう。ホッとした。これで、決着が付けらる。

「すまない。その思いに応える事は出来ない」

「そんな…こんなに好きなのに…」

「君をそんな風に見ることは出来ない」

険しい顔つきになる美穂。
「じゃあ、一度でいいので抱いてください。夕輝さんは遊びなら抱いてくれると聞きました」

誰から聞いたのか、過去の自分を思い出し反省する。
「…無理だ」

美穂が夕輝に向かって更に近づき抱きつこうとしたタイミングで、

「ストップ!」と夕輝の父親が止めに入った。

夕輝は、ホッと胸をなで下ろす。

「社長…どうして…」

「話は聞かせてもらった。夕輝の様子から思わせ振りな態度を取った訳ではなさそうだし、諦めてもらうしかない」

「でも!」

「君の気持ちはわかるが、一方的ではただの押しつけだよ」

「…」

「すまない」夕輝も応えられない事に謝罪する。

「わかりました…このままここで働いていたら、辛いので辞めます」

「頑張ってくれていたから残念だけど、わかった」

美穂は振り返る事なく店を後にした。

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