御曹司の恋の行方~和菓子王子編~
それから、学校や遥の仕事が忙しく、ふたりで長谷屋を訪れたのは、3カ月後だった。

「久しぶりの長谷屋で何かドキドキする」

「悠里可愛い。私は、いただき物ばかりでお店に来るのは初めてだわ。前を通るけど、入った事はないの。洗練された造りで、和菓子屋さんって、わからないわね。素敵」

「でしょ?中のショーケースを見たらもっと驚くわよ」

そして、中に入って更に驚く。
悠里が以前来た時より、人で溢れている。

「凄い人ね。若い子が思ったより多いわね」

「きっと、王子人気なんじゃないかな?」

「で、その王子は?」
ふたりはコソコソ話をする。

悠里が店内を見回し接客をしている夕輝を見つけた。
「今、贈答用のコーナーで接客してるわ」

さり気なく見る遥。
「なるほど。確かに騒がれそうな容姿ね」

「でしょ?」

「混んでるし、とにかく和菓子を選ばない?」

「そうね」

ふたりは、ショーケースをのぞき込む。

「それにしても、こんな素敵な和菓子初めて見たわ」

「でしょ?どれにする?」とふたりは和菓子に魅入る。

ふと、遥が視線を感じ顔を上げると、和菓子王子が悠里を見ている気がした。
この時の遥は間違ってはいなかった。

が、この時はその真意に気づくことなくお店を後にするのだった。


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