【完】あなたに送る5文字の言葉
「お待たせ」
声がした方へ、目線を向けると、私服の和人先輩がいた。
見慣れないからか、新鮮……。
「待たせちゃった?」
「いえ!私もさっき来たところなので……」
「それなら、よかった」
ホッとした感じで、先輩は言う。
「じゃあ、行こっか」
「はい!」
楽しみだな。
そんな気持ちを打ち砕かれることになるとは、この時の私は少しも思っていなかった。
* * *
それは、カフェで何気ない話をしていた時のことだった。
「あれ、和人?」
不意に聞こえた、優しい声の方に目を向ける。
「……菫?」
和人先輩の反応を見る限り、知り合いのようだった。
「久しぶり。元気にしてた?」
ニコッ、と優しく微笑むその子は、天使と言ってもいいぐらい、お人形さん級に可愛かった。
清楚なワンピースが彼女をより美しくしている。
「まぁ……」
少しぎこちなく、先輩が答える。