【完】あなたに送る5文字の言葉
「あれ、その子は?」
“すみれ”と呼ばれた子の目線が、私に向けられる。
「部活の後輩だよ」
ペコリ、と会釈すると、女の子は再びニコッと笑った。
「デートの邪魔したらだめだから、私はここでおいとまするね。またね、和人」
「ああ、また……」
そう言うと、女の子はあっという間に行ってしまった。
「あの、さっきの人って……」
気になって、ついつい口にしてしまった。
「幼なじみだよ。1個上なんだけど……」
少し恥ずかしいのか、人差し指で頬をかく、和人先輩。
先輩の上ってことは、大学生……。
通りで、可愛くて大人っぽいわけだ、と納得した。
「……先輩、顔赤いですよ?」
「いや、そんなことないよ……」
口では、そう言っていても耳まで赤かった。
あ……。
私は、すぐに察してしまった。
先輩は、さっきの人が好きなのだと。
そして……私の恋は、叶わないのだということを。