【完】あなたに送る5文字の言葉
* * *
日がすっかり暮れてしまい、先輩が家まで送ってくれることになった。
「今日は、ありがとう。すごく楽しかったよ」
「こちらこそ、ありがとうございます」
私は、頭の中がずっとぐるぐるしていて、上手く言葉を返せなかった。
その後も、淡々とした返し方しかできず、家に着いてしまった。
「送っていただき、ありがとうございました」
「お礼を言われるほどのことじゃないよ」
相変わらず、先輩は優しい。
その優しさが、今は心を痛くする。
「じゃあ、またね」
そう言って、手を振ってくれる先輩。
「はい、さようなら……」
あまり、目を向けないようにして言った。
先輩が見えなくなってから家に入り、すぐに自分の部屋に駆け込んだ。
なぜだかわからないけど、ドアを閉めると、堪えきれずに我慢していた涙がたくさん流れてきた。
そのまま、床に座り込み、膝を抱えて静かに泣いた。