【完】あなたに送る5文字の言葉



*   *   *





日がすっかり暮れてしまい、先輩が家まで送ってくれることになった。



「今日は、ありがとう。すごく楽しかったよ」


「こちらこそ、ありがとうございます」



私は、頭の中がずっとぐるぐるしていて、上手く言葉を返せなかった。


その後も、淡々とした返し方しかできず、家に着いてしまった。



「送っていただき、ありがとうございました」


「お礼を言われるほどのことじゃないよ」



相変わらず、先輩は優しい。


その優しさが、今は心を痛くする。



「じゃあ、またね」



そう言って、手を振ってくれる先輩。



「はい、さようなら……」



あまり、目を向けないようにして言った。


先輩が見えなくなってから家に入り、すぐに自分の部屋に駆け込んだ。


なぜだかわからないけど、ドアを閉めると、堪えきれずに我慢していた涙がたくさん流れてきた。


そのまま、床に座り込み、膝を抱えて静かに泣いた。


< 15 / 27 >

この作品をシェア

pagetop