【完】あなたに送る5文字の言葉
「ありがとう」
季節は変わり、夏を迎えていた。
8月に入ると、試合がある。
大会を控えた先輩たちは、これまで以上に練習に励んでいた。
もちろん、和人先輩も例外じゃない。
私や愛華たち、1年生は初心者も多く、2年生と3年生の先輩たちだけが試合に出ることになっている。
そんなある日の部活終わり。
片付けをしている時、コートで1人座り込んでいる和人先輩を見つけた。
何かあったのかと思い、すぐに駆け寄った。
「大丈夫ですか?何かあったんですか?」
そう聞くと、先輩の目が私を映した。
あ……。
やっぱり、綺麗だな……。
日に日に好きになっていく先輩に、一瞬だけ見惚れてしまった。
「いや、なんでもないよ。心配かけてごめんね」
そう言う先輩の笑顔は、どこか引きつっていた。
「なら、良かったです……」
そう言いつつも、ぎこちない先輩の笑顔が頭から離れない。