明日、キミマチ坂の上で
第一章: 孝太郎の場合
【 第一話: 孝太郎の場合① 】
「お~い、孝太郎待ってくれ~」
「洋介、遅いぞ。置いて行くぞ」
「はぁはぁはぁ、お前、この地獄坂、キツくないのか~」
「キツイからトレーニングになるんだろ。行くぞ」
「孝太郎、お前は化け物か~。こんな急坂よくバテねぇなぁ~。はぁはぁはぁ、待ってくれ~」
俺の名前は、孝太郎。
洋介とは幼馴染の親友で、中学、高校、大学と同じサッカー部のチームでずっとお互い切磋琢磨してきた。
そんな俺が、大学1年の秋の学園祭で、洋介に無理矢理推薦され、「ミスターコンテスト」に出場することになり、何かの間違いか、そこで何と、1年ながらミスターに選ばれてしまったのだ。
そのせいで、大学内でも一目置かれるようになったのはいいのだが、俺のファンだという女子の取り巻きたちを、俺は最近疎ましく感じていた。
それを唯一忘れさせてくれるのが、このサッカー部でのキツイ地獄坂での練習だ。
ここで練習している間は、その取り巻きたちも付いては来ないのだ。
そんなある日、地獄坂でのキツイ練習中、俺は坂の上のベンチで一人でお弁当を食べている女性がいるのに気が付いた。
何でこんな人気の無い所で、しかも一人でお弁当を食べているんだろうと思いつつも、その日はそのまま地獄坂を下りて行った。
次の日も、その女性は地獄坂の上のベンチで一人でお弁当を食べていた。
すると、洋介がこう言った。
「はぁはぁ、おい、姉ちゃん何であんなとこで弁当食べてるんだよ~」
「あ、そうか。久しぶりだな。遠くて顔伏せてたから分かんなかったけど、よく見たら、あれお前の姉ちゃんだな」
「そうだよ。メガネかけたニキビだらけの俺の姉ちゃんだよ。はぁはぁはぁ……」
「そう言えば、昨日もあそこで弁当食べてたな」
「知らねぇよ~。先行ってるぞ、孝太郎」
「あ、あぁ……」
俺は、久しぶりに会う彼女が気になり坂の上のベンチまで行ってみた。
「(久しぶりに話すな、さて、何て声かけようか……)」
俺は思い切って、こう話しかけた。
「ヨオッ! メガネっ子ニキビ! 久しぶり!」
「えっ? あ、孝太郎くん……」
彼女は驚いて、俺から顔を隠すように横を向いた。
「あのさ、何でこんなところで、一人で弁当何か食べてるの?」
「えっ? あ、私この場所が好きなの……」
「こんな人気の無いところが?」
「えっ? う、うん……」
「みんなと一緒に、学食で食べればいいじゃん」
「わ、私友達少ないし……」
「友達いないの?」
「う、うん……」
「じゃあ、俺で良ければ、一緒に食べてやろうか?」
「えっ? 孝太郎くんと?」
「あぁ、俺と」
「で、でも、孝太郎くんは沢山の女の子たちがいつも一緒でしょ?」
「彼女たちは勝手に俺に付いてくるだけさ。一緒に食べてやるから、明日から俺にも弁当を作って来てよ」
「えっ? 孝太郎くんのお弁当を?」
「あぁ、俺、料理ヘタだから、メガネっ子ニキビのおいしそうな弁当食ってみてぇな」
「べ、別にいいけど……」
「よし! じゃあ、決まりな。明日、この地獄坂の上で会おう!」
「わ、分かった……」
「と、練習に戻る前に、そのおいしそうな玉子焼き一つ頂戴」
「い、いいわよ。はい」
「モグモグモグ、う~ん、おいしい! パワー出てきた。それじゃあ、また明日な! メガネっ子ニキビ!」
「わ、私メガネっ子ニキビって名前じゃないから! 美緒だから……」
「あ~、ごめんごめん。美緒、また明日な~」
「う、うん……」
「お~い、孝太郎待ってくれ~」
「洋介、遅いぞ。置いて行くぞ」
「はぁはぁはぁ、お前、この地獄坂、キツくないのか~」
「キツイからトレーニングになるんだろ。行くぞ」
「孝太郎、お前は化け物か~。こんな急坂よくバテねぇなぁ~。はぁはぁはぁ、待ってくれ~」
俺の名前は、孝太郎。
洋介とは幼馴染の親友で、中学、高校、大学と同じサッカー部のチームでずっとお互い切磋琢磨してきた。
そんな俺が、大学1年の秋の学園祭で、洋介に無理矢理推薦され、「ミスターコンテスト」に出場することになり、何かの間違いか、そこで何と、1年ながらミスターに選ばれてしまったのだ。
そのせいで、大学内でも一目置かれるようになったのはいいのだが、俺のファンだという女子の取り巻きたちを、俺は最近疎ましく感じていた。
それを唯一忘れさせてくれるのが、このサッカー部でのキツイ地獄坂での練習だ。
ここで練習している間は、その取り巻きたちも付いては来ないのだ。
そんなある日、地獄坂でのキツイ練習中、俺は坂の上のベンチで一人でお弁当を食べている女性がいるのに気が付いた。
何でこんな人気の無い所で、しかも一人でお弁当を食べているんだろうと思いつつも、その日はそのまま地獄坂を下りて行った。
次の日も、その女性は地獄坂の上のベンチで一人でお弁当を食べていた。
すると、洋介がこう言った。
「はぁはぁ、おい、姉ちゃん何であんなとこで弁当食べてるんだよ~」
「あ、そうか。久しぶりだな。遠くて顔伏せてたから分かんなかったけど、よく見たら、あれお前の姉ちゃんだな」
「そうだよ。メガネかけたニキビだらけの俺の姉ちゃんだよ。はぁはぁはぁ……」
「そう言えば、昨日もあそこで弁当食べてたな」
「知らねぇよ~。先行ってるぞ、孝太郎」
「あ、あぁ……」
俺は、久しぶりに会う彼女が気になり坂の上のベンチまで行ってみた。
「(久しぶりに話すな、さて、何て声かけようか……)」
俺は思い切って、こう話しかけた。
「ヨオッ! メガネっ子ニキビ! 久しぶり!」
「えっ? あ、孝太郎くん……」
彼女は驚いて、俺から顔を隠すように横を向いた。
「あのさ、何でこんなところで、一人で弁当何か食べてるの?」
「えっ? あ、私この場所が好きなの……」
「こんな人気の無いところが?」
「えっ? う、うん……」
「みんなと一緒に、学食で食べればいいじゃん」
「わ、私友達少ないし……」
「友達いないの?」
「う、うん……」
「じゃあ、俺で良ければ、一緒に食べてやろうか?」
「えっ? 孝太郎くんと?」
「あぁ、俺と」
「で、でも、孝太郎くんは沢山の女の子たちがいつも一緒でしょ?」
「彼女たちは勝手に俺に付いてくるだけさ。一緒に食べてやるから、明日から俺にも弁当を作って来てよ」
「えっ? 孝太郎くんのお弁当を?」
「あぁ、俺、料理ヘタだから、メガネっ子ニキビのおいしそうな弁当食ってみてぇな」
「べ、別にいいけど……」
「よし! じゃあ、決まりな。明日、この地獄坂の上で会おう!」
「わ、分かった……」
「と、練習に戻る前に、そのおいしそうな玉子焼き一つ頂戴」
「い、いいわよ。はい」
「モグモグモグ、う~ん、おいしい! パワー出てきた。それじゃあ、また明日な! メガネっ子ニキビ!」
「わ、私メガネっ子ニキビって名前じゃないから! 美緒だから……」
「あ~、ごめんごめん。美緒、また明日な~」
「う、うん……」