明日、キミマチ坂の上で
第二章: 美緒の場合
【 第一話: 美緒の場合 】
私は、小さい頃からある男の子がずっと好きだった。
彼は、私の弟の幼馴染みで、私の入った大学に2年遅れて入ってきた2歳年下の男の子。
彼は、大学祭の「ミスターコンテスト」で1年生で、ミスターになってしまうくらいイケメン。
だから、私なんかとても相手にもしてくれないだろうと、ずっと今までそう思っていた。
そんなある日、私が地獄坂の上のベンチでお弁当を一人で食べていると、練習中の彼が何故か私に近づいてきた。
「(えっ? うそ? 孝太郎くんがこっちに来る、どうしよう……)」
「ヨオッ! メガネっ子ニキビ! 久しぶり!」
「えっ? あ、孝太郎くん……。(メ、メガネっ子ニキビって……?)」
私は、憧れの彼の顔がまともに見られず、横を向いた。
「ねぇ、何でこんなところで、一人で弁当何か食べてるの?」
「えっ? あ、私この場所が好きなの……」
彼は、色々と私のことを聞いてきた。すると、
「じゃあ、俺で良ければ、一緒に食べてやろうか?」
「えっ? 孝太郎くんと? (何で私なんかと?)」
「あぁ、俺と」
彼は意外にも、こんな私と一緒にお弁当を食べようと言ってきた。
「俺、料理ヘタだから、メガネっ子ニキビのおいしそうな弁当食ってみてぇな」
「べ、別にいいけど……」
「よし! じゃあ、決まりな。明日、この地獄坂の上で会おう!」
「わ、分かった……。(もう、脳天気なんだから……)」
彼は玉子焼きを一つ頬張ると、「美緒、また明日な~」と言って、また元気よく練習に戻って行った。
私はその夜、憧れの彼のために、一生懸命料理本を見ながら、色々とお弁当の具材を仕込んだ。
翌朝、調理をして2つのお弁当箱に詰めると、私はまたあの坂の上のベンチで彼を待っていた。
すると、彼が私を見つけて、こっちへ駆け寄って来てくれた。
「(うそ? 本当に孝太郎くんが、キターー!)」
「ヨオッ! メガネっ子ニキビ! 約束通り来てやったぞ!」
「あ、こ、孝太郎くん……」
「おっ? 弁当2つあるっていうことは、それ一つはもしかして俺の?」
「そ、そう。作って来たよ。約束通り……。(孝太郎くんが作って来てって言ったから……)」
「おー、それはありがたい。ヨシ! 一緒に弁当食べるか」
彼はおいしそうに、私の作ったお弁当を食べてくれた。
憧れの彼を前にして、他のファンの女の子たちを差し置いて、一緒にお弁当を食べていることに私は舞い上がっていた。
「怒った顔もかわいいな」
「えっ? か、かわいい……? (突然、孝太郎くん何を言うの……?)」
「あぁ、そう。メガネを取って、ニキビが無くなったらもっとかわいくなると思うぞ。ムシャムシャムシャ……」
「えっ? メガネとニキビ……、それ、一番私が気にしてること……」
「俺さ、小さい時に見た美緒は、メガネもかけてなかったし、ニキビだってなかったし、今よりもっと元気だったけどな」
「(だって……)わ、私、恥ずかしいの……、この顔、みんなに見られるのが……」
「もしかして、だから一人でここで弁当食べてたの?」
「そ、それもあるけど……」
ちょっと、ショックだった。
中学に入ってからニキビが増え始めて、それを隠すようにメガネをかけるようになった。
そして、いつしか、顔自体見られるのがとても嫌になり、段々伏目がちになっていった。
それでも、私の憧れの彼は、元気に私にこう言ってきた。
「あ~、おいしかったぁ~。メガネっ子ニキビの弁当、どれも絶品だな」
「美緒だから……(もう、私の方が先輩なのに)」
「俺、そろそろ練習に戻んなきゃ。怒られちゃう。弁当おいしかった、ご馳走さん!」
「う、うん……」
「じゃあ、また明日な! メガネっ子ニキビ!」
「だから、美緒……、だから……。(孝太郎くんのバカ……)」
彼はそのまま地獄坂を猛スピードで駆け下りて行った。
私はその後、あの坂の上には行けなくなった。
憧れの彼には会いたいけど、この顔を見られたくない気持ちの方が勝っていたから。
私は、自分自身を変えるため、大学のテスト休みを利用して、メガネをコンタクトに変え、ニキビを徹底的に治した。
私は、小さい頃からある男の子がずっと好きだった。
彼は、私の弟の幼馴染みで、私の入った大学に2年遅れて入ってきた2歳年下の男の子。
彼は、大学祭の「ミスターコンテスト」で1年生で、ミスターになってしまうくらいイケメン。
だから、私なんかとても相手にもしてくれないだろうと、ずっと今までそう思っていた。
そんなある日、私が地獄坂の上のベンチでお弁当を一人で食べていると、練習中の彼が何故か私に近づいてきた。
「(えっ? うそ? 孝太郎くんがこっちに来る、どうしよう……)」
「ヨオッ! メガネっ子ニキビ! 久しぶり!」
「えっ? あ、孝太郎くん……。(メ、メガネっ子ニキビって……?)」
私は、憧れの彼の顔がまともに見られず、横を向いた。
「ねぇ、何でこんなところで、一人で弁当何か食べてるの?」
「えっ? あ、私この場所が好きなの……」
彼は、色々と私のことを聞いてきた。すると、
「じゃあ、俺で良ければ、一緒に食べてやろうか?」
「えっ? 孝太郎くんと? (何で私なんかと?)」
「あぁ、俺と」
彼は意外にも、こんな私と一緒にお弁当を食べようと言ってきた。
「俺、料理ヘタだから、メガネっ子ニキビのおいしそうな弁当食ってみてぇな」
「べ、別にいいけど……」
「よし! じゃあ、決まりな。明日、この地獄坂の上で会おう!」
「わ、分かった……。(もう、脳天気なんだから……)」
彼は玉子焼きを一つ頬張ると、「美緒、また明日な~」と言って、また元気よく練習に戻って行った。
私はその夜、憧れの彼のために、一生懸命料理本を見ながら、色々とお弁当の具材を仕込んだ。
翌朝、調理をして2つのお弁当箱に詰めると、私はまたあの坂の上のベンチで彼を待っていた。
すると、彼が私を見つけて、こっちへ駆け寄って来てくれた。
「(うそ? 本当に孝太郎くんが、キターー!)」
「ヨオッ! メガネっ子ニキビ! 約束通り来てやったぞ!」
「あ、こ、孝太郎くん……」
「おっ? 弁当2つあるっていうことは、それ一つはもしかして俺の?」
「そ、そう。作って来たよ。約束通り……。(孝太郎くんが作って来てって言ったから……)」
「おー、それはありがたい。ヨシ! 一緒に弁当食べるか」
彼はおいしそうに、私の作ったお弁当を食べてくれた。
憧れの彼を前にして、他のファンの女の子たちを差し置いて、一緒にお弁当を食べていることに私は舞い上がっていた。
「怒った顔もかわいいな」
「えっ? か、かわいい……? (突然、孝太郎くん何を言うの……?)」
「あぁ、そう。メガネを取って、ニキビが無くなったらもっとかわいくなると思うぞ。ムシャムシャムシャ……」
「えっ? メガネとニキビ……、それ、一番私が気にしてること……」
「俺さ、小さい時に見た美緒は、メガネもかけてなかったし、ニキビだってなかったし、今よりもっと元気だったけどな」
「(だって……)わ、私、恥ずかしいの……、この顔、みんなに見られるのが……」
「もしかして、だから一人でここで弁当食べてたの?」
「そ、それもあるけど……」
ちょっと、ショックだった。
中学に入ってからニキビが増え始めて、それを隠すようにメガネをかけるようになった。
そして、いつしか、顔自体見られるのがとても嫌になり、段々伏目がちになっていった。
それでも、私の憧れの彼は、元気に私にこう言ってきた。
「あ~、おいしかったぁ~。メガネっ子ニキビの弁当、どれも絶品だな」
「美緒だから……(もう、私の方が先輩なのに)」
「俺、そろそろ練習に戻んなきゃ。怒られちゃう。弁当おいしかった、ご馳走さん!」
「う、うん……」
「じゃあ、また明日な! メガネっ子ニキビ!」
「だから、美緒……、だから……。(孝太郎くんのバカ……)」
彼はそのまま地獄坂を猛スピードで駆け下りて行った。
私はその後、あの坂の上には行けなくなった。
憧れの彼には会いたいけど、この顔を見られたくない気持ちの方が勝っていたから。
私は、自分自身を変えるため、大学のテスト休みを利用して、メガネをコンタクトに変え、ニキビを徹底的に治した。