1日だけの恋~10月25日夜完結~
「ちょっ!」
男の腕の中で身じろぎする。

「しっ!黙って。危ないなーきみは。そんなんじゃ芝居がすぐに、ばれてしまうよ。恋人なのに、彼女が頭ばかり下げてるなんておかしいだろ。ほら、彼がこっちを見てる」

見てるのはスーツの彼だけじゃなかった。
立ち上がってハグしているカップルがいたら、みんなが注目する。

「あぁ……そうですね。で、でもっここまで…する必要がありますか?」

背中に置かれた男の手に緊張していた。

「黙って、もう少しこうしてて芝居が無駄になる。ほら、彼が怒ったのかな?立ち上がったよ」

「えっ、本当に?」
私の方からはスーツの彼の姿が見えない。

「ああ。今、席から離れて出口の方へ向かってる」

「……良かったぁ」

とりあえずうまくいったのだとホッと息をついた。

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