1日だけの恋~10月25日夜完結~
「はい。それで十分ですから、よろしくお願いします」
テーブルの上に置いていた私の手を、前触れもなく男が握ってきた。
「!」
手を握ってきた男を見たものの驚きのあまり声を出せなくなる。
「恋人同士なら……手くらい握るよね?」
にこやかな顔で手を握り、男は親指の指先で握った私の手をなぞる。
えぐい。
女好きだ、これは。間違いない。
ぎょっとして見上げた男の瞳が、あまりにも綺麗で一瞬されていることも忘れて見惚れてしまった。
綺麗。
こげ茶色でアーモンド型をした瞳。
雑誌で見るより実物は素敵だ。
男の格好よさに、ついほだされそうになって、慌てて身を引き締めた。
何か言おうと口を開きかけたとき
「そのまま僕から目をそらさないで」
と男が小さな声で呪文のように言った。
「あーー、なるほど芝居ですね。お気遣いありがとうご…」
頭を下げようとした私の手を引き立ち上がらせた男。
私はいつの間にか立っていて男に抱きしめられていた。