バイバイ、ベリヒル 眠り姫を起こしに来た御曹司と駆け落ちしちゃいました
第2章 夢見ていられるだけで良かったのに
 目を開けるとそこは静かな部屋だった。

 私はベッドに横たわっていた。

 ふかふかで軽い寝具に、首にまったく負担のかからない枕。

 ベッドのまわりにはバラの編み込まれたレースのカーテンが下がっている。

 まるでお姫様の目覚めだ。

 柔らかな色をした木目調の壁に三方を囲まれ、右側は大きな窓になっていて、淡い光が部屋全体を包んでいた。

 部屋は広く、一人暮らしの自分のアパートに比べるとずいぶんと壁が遠い。

 ここはいったい……。

 右手にチューブのつながった針が刺さっている。

 点滴……?

 だんだんと記憶がよみがえってくる。

 そうだ、私、倒れたんだった。

 会社の大事なパーティーで人がぶつかってきて倒れたんだったっけ。

 最後に見たのは確か社長の顔だったような……。

 ああ、やってしまった。

 マスコミやセレブに向けたPRイベントだったのに、全然違うところを印象づけてしまった。

 会社にどれだけ損害を与えてしまったんだろうか。

 山中先輩にも迷惑をかけてしまった。

 あってはならない大失態だ。

 でも、それなら、ここはいったいどこなんだろう。

 病院というよりは、高級ホテルかタワマンのモデルルームみたいだ。

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