バイバイ、ベリヒル 眠り姫を起こしに来た御曹司と駆け落ちしちゃいました
と、そこに佐々木課長がやってきた。
「お、星崎、元気か。心配したぞ。大変だったんだってな」
「課長、大事な部下を危険な目にあわせてしまって申し訳ありませんでした」
先輩に先に謝られてしまって恐縮するしかなかった。
「まあ、いいじゃないか。なんともなさそうだし。大丈夫なんだろ?」
「はい、おかげさまで」
「さっき社長からもメールが来ててな。様子を見てやってくれってさ」
社長から?
「社員のことを大事にするのはいいんだけど、脇が甘くて困りますよね」と、先輩が課長にスマホの画面を見せた。
「うわ、こりゃまたバッチリだな」と課長が人差し指を立てた。「シャインよりシャシンに気を配れってか」
凍りついた表情の先輩がぴょこりと頭を下げる。
「じゃあ私、広報部に戻りますので」
あ、ずるい。
私だけ置いてっちゃった。
「しゃいん、しゃしん、……似てないかな」
ぶつぶつ一人反省会を開いている課長を放っておいて、私も自分の業務に取り組むことにした。
それにしても、自分も馬鹿みたいだったな。
何に期待してたんだろう。
きらびやかな世界を見せられて舞い上がっちゃってただけか。
ふと、社員証のケースを見る。
チタン製のメタルカードがそのまま入っている。
このカードさえあれば高層階の世界にアクセスできる。
だけど、そこに私の居場所があるかと言えば、あるわけがない。
分かってる。
そんなことは最初から分かっていることだった。
社長にとってはただの社員。
思い違いをしてはいけないんだ。
そうだ、今夜、このカードを返しに行こう。
私にはふさわしくない物だもんね。
そうすれば、今夜もう一度だけ会いに行く理由ができる。
業務中、私は何度も自分にそう言い聞かせていた。
「お、星崎、元気か。心配したぞ。大変だったんだってな」
「課長、大事な部下を危険な目にあわせてしまって申し訳ありませんでした」
先輩に先に謝られてしまって恐縮するしかなかった。
「まあ、いいじゃないか。なんともなさそうだし。大丈夫なんだろ?」
「はい、おかげさまで」
「さっき社長からもメールが来ててな。様子を見てやってくれってさ」
社長から?
「社員のことを大事にするのはいいんだけど、脇が甘くて困りますよね」と、先輩が課長にスマホの画面を見せた。
「うわ、こりゃまたバッチリだな」と課長が人差し指を立てた。「シャインよりシャシンに気を配れってか」
凍りついた表情の先輩がぴょこりと頭を下げる。
「じゃあ私、広報部に戻りますので」
あ、ずるい。
私だけ置いてっちゃった。
「しゃいん、しゃしん、……似てないかな」
ぶつぶつ一人反省会を開いている課長を放っておいて、私も自分の業務に取り組むことにした。
それにしても、自分も馬鹿みたいだったな。
何に期待してたんだろう。
きらびやかな世界を見せられて舞い上がっちゃってただけか。
ふと、社員証のケースを見る。
チタン製のメタルカードがそのまま入っている。
このカードさえあれば高層階の世界にアクセスできる。
だけど、そこに私の居場所があるかと言えば、あるわけがない。
分かってる。
そんなことは最初から分かっていることだった。
社長にとってはただの社員。
思い違いをしてはいけないんだ。
そうだ、今夜、このカードを返しに行こう。
私にはふさわしくない物だもんね。
そうすれば、今夜もう一度だけ会いに行く理由ができる。
業務中、私は何度も自分にそう言い聞かせていた。