バイバイ、ベリヒル 眠り姫を起こしに来た御曹司と駆け落ちしちゃいました
第3章 眠り姫のゆりかごはあなたの腕の中
その日から三日間、私は眠り続けていた。
時々目を覚ましたはずなのに、何も覚えていない。
スマホには山中先輩からのメッセージが何通も入っていた。
『大丈夫? やっぱりどこか具合が悪かったのかな?』
『有給扱いにしてもらってるから、心配しないで静養しなよ』
返信はしなかった。
スマホを見るたびに、社長と二人で撮った写真を表示させてしまう。
見ない方がいいって分かっているのに。
距離はあるのに、頬を寄せ合っているように見えるトリック写真。
こんなので舞い上がっちゃって……。
私はチョロい女だったんだ。
馬鹿な私……。
四日目の朝、私は会社に向かった。
退職願を提出するためだ。
机の上に差し出した封書を見て、佐々木課長が目を見開いている。
「なんだ、どうしたんだ?」
「すみません。一身上の都合です」
課長は腕を組んで真一文字に口を結んだまま、しばらく私の提出した封書を見つめていた。
「少し話そうか」
総務部のカフェスペースに移動して、観葉植物で隠れたテーブルに向かい合って座る。
「何があったのか話してくれないか」
「何もありません」
「それでこの退職願を受け取れと言われても困るな」
「すみません。会社に不満はありません」
「なら、なおさらだろ」
課長は困惑しながらも穏やかな口調を崩すことなく私と向き合ってくれていた。
でも、理由を話すわけにはいかないし、できない。
時々目を覚ましたはずなのに、何も覚えていない。
スマホには山中先輩からのメッセージが何通も入っていた。
『大丈夫? やっぱりどこか具合が悪かったのかな?』
『有給扱いにしてもらってるから、心配しないで静養しなよ』
返信はしなかった。
スマホを見るたびに、社長と二人で撮った写真を表示させてしまう。
見ない方がいいって分かっているのに。
距離はあるのに、頬を寄せ合っているように見えるトリック写真。
こんなので舞い上がっちゃって……。
私はチョロい女だったんだ。
馬鹿な私……。
四日目の朝、私は会社に向かった。
退職願を提出するためだ。
机の上に差し出した封書を見て、佐々木課長が目を見開いている。
「なんだ、どうしたんだ?」
「すみません。一身上の都合です」
課長は腕を組んで真一文字に口を結んだまま、しばらく私の提出した封書を見つめていた。
「少し話そうか」
総務部のカフェスペースに移動して、観葉植物で隠れたテーブルに向かい合って座る。
「何があったのか話してくれないか」
「何もありません」
「それでこの退職願を受け取れと言われても困るな」
「すみません。会社に不満はありません」
「なら、なおさらだろ」
課長は困惑しながらも穏やかな口調を崩すことなく私と向き合ってくれていた。
でも、理由を話すわけにはいかないし、できない。