バイバイ、ベリヒル 眠り姫を起こしに来た御曹司と駆け落ちしちゃいました
◇
それからもアパートに引きこもって、一日のほとんどを狭いベッドの上で過ごす生活に変わりはなかった。
昼と夜が逆転している毎日だった。
梅雨入りして、あまりカーテンを開けることもなくなっていた。
その日も目覚めたら午後だった。
スマホが震えている。
山中先輩からだ。
「七海、ニュース見てる?」
先輩の声を聞くと、なんだかまだ会社にいるみたいだ。
でも、もう私には関係のない世界なのにな。
「なんのことですか?」
「買収よ! 社長が会社をドナリエロ・グループに譲渡して辞任したのよ」
バイシュウってなに?
サクラちゃんの質問を思い出した。
メロン、買ってもらえたのかな。
じゃなくて!
「買収って、なんの話ですか?」
「だから、会社を売り払って社長を辞めたってことよ」
意味は分かる。
でも、何が起きているのかが分からない。
「とにかく、今、社長の記者会見やってるから、動画ニュースを見てよ」
私はいったん電話を切ってニュースアプリに切り替えた。
『ハピネスブライト売却に関する記者会見(Live)』
会場には社長と、ミケーレさん、それに、引退した大里選手も同席している。