恋の花を咲かせた3月の涙。
逃げるようにしてみんなは教室を出て行った。


もちろん私の席の隣の峰原さんも。


「こんにちは、ひよりちゃん」


前の席の、ふわふわした女の子が私に声をかけてきた。


「こんにちは」


「私は笹野和花。みんな和花って呼んでるから、ひよりちゃんもそう呼んでね!」


外見をそうだけど声もふわふわしている。


「うん」


「で、眼鏡をかけたのがさっちゃんで、背が低いのがちぃちゃん。2人もとっても優しい子だから仲良くなれるよ」


「よろしくね、ひぃちゃん」


「よろしく、ひよりん」


自己紹介の時はこのクラスの人が怖いと思っていた。けれど、この3人と言葉を交わしてみたら、いい人も居るんだと思った。



「ひぃちゃん、このクラス嫌だよね。私も嫌なんだ」


さっちゃんの声は4人しかいない教室にやけに響いた。
「このクラスにはね、いくつかグループがあってね」


気まずそうに言う和花ちゃん。


「雰囲気でわかると思うけど、このクラスにはいじめがあるの」


見ただけでわかる、作り笑いをするさっちゃん。


「本当はみんなひよりんの事気になってるし、話かけたいって思ってるんだよ? けど調子に乗ってるって思われたくなきから話かけられないんだと思う」


少し寂しそうな表情を見せるちぃちゃん。


「2年と3年はクラス替えがないって先生が言ってたけど、まさか去年から?」


「そう。ひよりが思っている通りだよ」


「そうなんだ」


きっと、私が思っている以上にみんな辛い想いをしている。


このクラスには、いじめをしているグループ、

それを楽しんでいるグループ、

自分の意見を隠して上の人に流されるグループ、

いつ標的になるか怯えているグループが存在していると和花ちゃんが言った。


前の学校にもスクールカーストがあったけれど、ここまではっきりしていなかったし、酷くなかった。


「私たちこれから部活だから、明日の放課後ひぃちゃんに学校案内しない?」


「さっちゃんナイスアイディア! ひよりん、明日時間ある?」



「大丈夫だよ。ありがとう」


本当は先生が春休みに案内してくれたけれど、断る理由は見つからなかった。


「じゃあまた明日、ひよりちゃん」


「ばいばーい」


「またね!」


「うん。また明日」


走って教室を出た3人。


初対面であだ名で呼ばれるなんて小学生以来。



あの3人はどこのグループにあたるのだろう?


話かけてくれたのはうれしいけれど緊張した。


ちゃんと出来てたかな?


きっとこの3人も1週間もしたら私の事なんて忘れてしまうだろう。


だったら最初から期待するのはやめよう。
< 3 / 11 >

この作品をシェア

pagetop