秋を憂い、青に惑う
お前はそこにいて、っていうから和泉の言いなりで工具屋の入り口にあるガチャポンを物色していたら、ちっさい男の子がなんかの卵のガチャポンをして遊んでいた。つい微笑ましく見ていると、その子がててて、と寄ってくる。
「お姉ちゃん、これあけて」
「いいよー」
可愛いね、ってにこにこしながら受け取って、開けてあげようとする。開かなかった。あれ、ってすこし下を向いてからまたその子を見ながら開けようとして、開かない。カプセルよ、空気読め。
待って本気出す、と立ち上がって両サイドに捻っていても開かず、んぐぐ、と多分不細工な顔で真っ赤になって力を込めてたら横から掠め取られた。
で、ぱかって開けたのは和泉。中身を渡してありがとー、ってわたしと和泉を交互に見るその子はただの天使だったけれど、あの硬さには悪意しか感じられない。カプセルメーカーに苦情言ってやろうか。どこに言えばいいかわかんないけど。
「両サイドからひねるんじゃなくて、押すんだよ」
「あんなの子ども絶対あけらんないでしょ、悪意しかないわ! くそっ」
「口悪」
べい、とかごの中にカプセルを放り込んで振り向いたらん、って今し方工具屋で済ませた買い物と思しき何かを渡された。
赤の、なんか重みのあるそれが何なのかよくわからなかった。なにこれ。ハサミとか、栓抜きとか付いてる。
「誕生日プレゼント」
「…わたし誕生日5月だよ?」
「おれ10月」
お互いいー季節に生まれたね、って言われて、その腕に引っ掛かったスーパーの袋を学生鞄に収める和泉の背中を追っていたら、それブレザーの内側に入れとけよって言われた。
わかんないし仕方ないから、言われるがままにした。本当は黒と迷ったんだぞって言われて、胸ポケットに入れたら少し重かったしもう何でもいいけど、次誰かに何かを渡すなら和泉、もっといいのにしなよってセンスを疑う。
はじめて好きなひとにもらうものなんて、安くてもいいからもっと可愛いのが良かったよ。