秋を憂い、青に惑う
何かのドラマで観た、風車がぐるぐる回っている世界の果てに男の子と女の子が二人で手を繋いで歩くのを綺麗だと思った。
若い子はこういうのが好きね、
10代が好きそうな歌ね、
誰それの真似事ねってのたまう大人の一部にはどうか、わたしはなりたくないって思う。
たくさん生きていたら視野が拡がって、感性が次第に薄れて、だから出逢ったばかりの純粋な衝撃を、研ぎ澄まされていた時に重ねてあの頃はよかったって嘆くの、捨てさえしなければきっと失うばっかりじゃない。
わたしはまだ17で、これから逆の立場に立ったときわたしたちにそう言った大人と同じことを思うのかもしれない。でもそんなのは嫌だよ。
そんな話を友達としていたのを、和泉は聞いていたのかもしれなかった。
工具屋に寄った帰りに自転車で似たような場所を通ったとき、だから言おうか迷ったんだ。
その日東京の外れに自転車を乗り捨てて、無人の車窓から眺めた夕焼けの畦道を、光みたいに飛んで行く羽虫を、彼岸花を見てそう思った。
「お嬢ちゃんたちどっから来たの」
「さー、どこでしょ」
「お洒落な制服着てんねぇ、都会の子でしょ、何もこんな古びた店なんか選ばんでもいいのたくさんあるんでしょうに」
新聞を片手に物好きな子もいたもんだ、って笑うだけで、閉店間際に駆け込んだと言うのに商店街の服屋のおじさんはわたしたちを煙たがったりしなかった。
あんまり人目につくとこには行きたくない、って和泉は渋ったけど、わたし、人を見る目には自信があるんだよ、と言ったら黒のハイネックニットに鶯色のコートを羽織った和泉が鏡越しにわたしを睨むからべえ、って舌を出す。