人間を好きになった、魔王の娘
「お父様は、魔王城に閉じ込めたいのかしら」
「だろうね。僕は魔王になるつもりはないし」
は?
「何言ってんの。あの父親の息子のあんたが継がなくて、どうすんの」
「僕にその才能はないから。
だからこそ、早々に姉さんに結婚してもらって、魔王城に入ってもらいたいんだよ
”次期魔王候補”に」
それが嫌なのに
「まぁ、姉さんもそれが嫌なんだろうけど」
「当り前でしょう?
それとも、あたしを殺してでも、連れて帰るつもり?」
「そんなことしたら、母さんが発狂する」
「そんなことないでしょう?
あたしよりも、廻の方が大事にされてたもの。
あたしにはそんなことされたこともない」
「逆だと僕は思ってたけどなぁ」
逆ねぇ・・・
「帰るまでの期間は1年」
1年?
そんな時間がないと言う事?
「もし、姉さんがこっちで好きな奴でも出来たら
その時は諦めるよ。だけど、そうじゃなかったら
姉さんが嫌だと言っても、”魔界”に連れて帰るよ」
あたしが嫌だと言っても、か
「その時は諦めるわ」
その言葉を聞いた廻は、魔界に帰るのだろう
「そう言ってくれると助かるよ」
飛んでいった廻を見送った後も
あたしは動けないでいた
「結局、あたしはどこにいても1人だ」
夢ちゃんもクラスが一緒なだけで
あたしの味方ではない。
悠翔君にも、悠翔君の生活がある。
この1年であたしが悠翔君に婚約を破棄して
魔界に戻されることもしようと思えばしてしまうだろう