俺様めちゃモテイケメンが一人にはまったら。
叔父と話をしていたため昼食をとってデスクに戻るのが一時を少し過ぎてしまった。既にデスクに戻っていた天と今日中にこなしておかなければならない事を確認していると、外から戻ってきた仁見さんが凄い形相で俺の方に向かってきた。

横を通り過ぎた者もギョッと目をむくほどに。


「祐世さん!今、父から連絡がありました。どう言うことですか!」


祐世さん?
お前に名前を呼ばれる筋合いはないと文句を言いたかったがグッとこらえた。

叔父さんが俺との話を終えて直ぐにアルクの社長に連絡を入れたのだろう。
そして娘に一報を入れてきたのか。


「何がですか?それより、あなたに名前で何故呼ばれているのでしょうか?」


名前呼びの事はスルーしようかとも思ったが、噂が大きく広まっている状態だ、社内でもその話を聞いて信じている者もいるかもしれない。仁見さんとは親しい関係ではない事を強調するためにもわざと呼び方に付いて触れた。


「えっ、だって・・・。」

「社内で顔を合わせるだけの同期で、仕事の話以外した事も無い異性に対して気安く名前を呼ぶなんて凄いですね。」

「だって、祐世さんと私は・・・。」


婚約者とでも言いたいのか。
仕事の指示を出す会話しかした事もないのに彼女の中では既に俺が婚約者になっているのか。


「申し訳ないけど名前で呼ぶのやめてもらえますか?俺の事名前で呼んでいいのは彼女、いや婚約者だけなんで。」

「じゃあ!」

「じゃあ?まさか自分が婚約者だって言うんですか?最近どこの寄合に行ってもあなたとの婚約おめでとうと言われます。冗談じゃない、婚約の『こ』の字も聞いたことがないのに。それに俺には五年前から付き合ってる彼女がいるんで。親も認めた婚約者がね。彼女がこの噂を聞いて心を痛める姿は見たくない。それでなくても去年一年間、仕事を覚えるために淋しい思いをさせたのに。」


仁見さんはそこまで聞いて初めて顔を青くさせ何処かに行った。
周りにいた者たちも今の会話が聞こえていたようで手を止めこちらの様子を伺っている。美月も仁見さんがあんな行動に出るとは思っていなかったのか心配そうにこちらを見ていた。

社内はこれでいいいか。年明けには勝手に噂が広まってくれるだろう。
仁見さんは・・・、もしかすると年明けからは出社しないかもしれないな。
まあ来なくなっても業務に支障はないから、いいか。





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