俺様めちゃモテイケメンが一人にはまったら。
無意識に頬に涙がつたう。顔を上げた彼が驚いた様子で見ている。


「美月、ホントにごめん。嫌な思い、辛い思いさせて。俺、自分の気持ちがちゃんとしてれば大丈夫だと思ってた。女友達がメンバーに入ってても何ともないって。向井が家の中の物を美月に自分の存在を気づかせるように細工してる事も気づいてなかった。あの日もそれ以前に何回かみんな一緒に泊めたことがあったから、女子一人だけど何も考えてなかった。どっちにしても美月が知らない間に美月以外の女の人が家に入ってるの、いい気しないよな。そんな事も俺気づいてなかった。ごめん。」


祐世は私を抱きしめ一気に語った。


「あの潜り込んでたヤツ、向井って言うんだけど、学部も同じで一年の最初から仲いいメンバーの一人で、俺の事好きなんだろうって事は薄々気づいてたんだ。でも俺が全くそんな雰囲気にさせなかったから直ぐに普通の友達と変わらなくなった。でもずっとスキを狙ってたみたいで、あの日の後もマンションの下で俺の帰りを待ってる事があって、『二度と来るな、話しかけるな』って言ったから来ないとは思うけど、てか、美月もあの部屋来るの気分的に嫌だろ?だから引っ越してきた。」

「えっ?ちょっと待って?この部屋は友達の部屋じゃないの?」


ずっと顔を俯かせたままだったけど引っ越したと聞き、思わず顔を上げた。

『やっと顔見せてくれた。』嬉しそうに顔を綻ばせオデコにキスをする。


「だってこの部屋の物、祐世の家にあったものと全く違う!」

「うん、全部買い替えた。」

「はっ?買い替えたの?」

「そっ。向井が勝手に使ってたと思うと嫌で、どっかに盗聴器とかありそうで気持ち悪くない?それに美月にも、あの日の事を思い出させて、いやな気分にさせるかもって思ったから引っ越しと同時にリサイクル業者に引き取ってもらった。」

「うそ・・・。」


だって一式買い替えるのけっこうするよ?
部屋変わるだけでも敷金とかいるし・・・。

サラっと言う彼の事をぼーっと見ていた。


「美月、もうあんな思いはさせない、だからこれからも一緒にいて下さい。愛してる。」


ここに来る時、不安でしょうがなかった気持ちがパッと晴れ、さっき流したのとは全く逆の意味の涙がこぼれた。


「祐世、大好き。もう、んっ!」


言葉の途中で唇を塞がれ最後まで伝える事ができなかった。『絶対に離さないでね。』



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