俺様めちゃモテイケメンが一人にはまったら。
営業部には私たちの他に三人の秘書二課の先輩がいる。
部長付が一人で一課に一人ずつ。
どの人がどの課とは明確に決まっているわけではないが、何となく担当が決まっているとか。

だから荒木さんが主として受け持っていた一課が私達二人の担当になるらしい。
秘書歴五年の荒木さんが一人でこなしていた一課は営業の中でもエリート集団、国内はもちろんだが海外との取引も多い部署。
確かに新人が一人で受け持つにはムリがある。だから二人なのか。

でも二人いるからと言って安心はできない。四月中は荒木さんがここに残り指導してくれるが五月になれば余り頼る事も出来ない。約二週間で覚える事は山のようにある。


営業部での初日は祐世に会う事が無かったが夜になりメッセージが入った。

【営業に来るかな?とは思ってたけど、一課だって聞いて驚いた。ちゃんと最後まで話がしたい。土曜日、三時頃までは仕事で出るけど四時には戻るから会えないか?】

あの日以来、ずっと電話にも出ずメッセージも返さずにいたが同じ職場で働くようになるんだからこのままでいいわけがない。

【ずっと返事しなくてごめんね。予定はないから大丈夫だよ。どこに行けばいい?】

意を決して返事を返した。
すると直ぐにブッー、ブッーとスマホが振動し着信を告げる。表示は『祐世』。


「はい。」

「やっと出てくれた・・・。」


声から心底ホッとした感情が伝わってくる。


「ごめんね。急に予想外過ぎることを聞かされていっぱいになっちゃった。」

「いや、俺がちゃんと伝えて来なかったのが悪いから。ごめん。」


お互いなんて話をしたらいいのかわからず暫く沈黙が続いた。


「あのさ、美月がよければ家来て夕飯作ってほしい。久しぶりに美月のご飯が食べたい。」

「えっ、家行っていいの?」


よく考えたら、まだカギも持ってるし別れたわけじゃないからいいんだよね?
でもずっと、何カ月も行ってなかったし、祐世にも会ってなかったから思わず口に出てしまった。


「当り前だろ!いや、・・・うん、美月がそう思う原因作ってるの俺だよな・・・。ごめん。美月が来なくなって家の中ちょっと荒れてるけど、よかったら来て。んで、ご飯作って。」

「わかった。じゃあ土曜日、祐世の家でご飯作って待ってる。」

「うん。なるべく早く帰るから。」





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