幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜
千尋さん────山名千尋は26年前、演劇部のエースだったという。


凛とした美人で芝居も上手く、何作ものヒロインを立派に演じ切ったそうだ。


成績も良かったから進学を勧められていたけど、本人は女優の道に進みたいと断っていたらしい。


それが、最後の舞台では姿を消し、それどころか学校にも来なくなってしまった。


そして卒業を迎える1ヶ月前、学校に山名千尋の訃報が届く。


「ヒロインの座を巡っていざこざがあったみたい。それで彼女責められちゃって、学校でも孤立しちゃったって。死因は伏せられてたけど自殺だったって噂」


演劇部の部員の中に千尋さんと1年だけ被ったお母さんを持つ人がいて、その噂はじわじわと囁かれるように広まっていった。


それが呪いだと言われるほどに。


なんだか、胸の辺りに重い石が乗っかったような気分だ。


たとえ揉め事があったとしても、それが殺されていい理由にはならない。


千尋さんの自殺は、多くの人が作り出した他殺だと考えてしまうのは、少し意地が悪いだろうか。


「……千尋さんが、怒ってポルターガイストを起こしてるのかな」


「どうかな。生霊だって線もあったりして。山名千尋だったとしても、今まで起こらなかったのに急に起こるはずないだろ」


なんだ藤原。


ずっと寝てたのかと思ってたけど、話聞いてたんじゃん。


あたしが褒めると、ヤツはあたしの椅子の背もたれにゴミを投げつけやがった。
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