幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜
「……あの、あたし一緒に戻りましょうか?」


あまりにも可哀想で、というかあたしだったらここまで1人で来るのも出来そうになかったから、おずおずと手を挙げてみる。


怖いけど、2人が舞台から落ちた場所になにか手がかりになるものもあるかもしれないし。


「ほんとに……?」


理香さんは涙に濡れた顔を上げる。


「あたしで良ければ、ですけど……」


「……お願いできる?」


あたしははい、と頷く。


「じゃあ、えーと」


「金森遥です」


「金森さん、理香をお願い。取り敢えず私は2人の様子見てくるから」


岩橋さんが言い置いて、生徒会室を出ていく。


あたしたちも行きましょう、と理香さんの背中に手を添えて促すと、理香さんは涙を拭って立ち上がった。


「じゃ、金森旧体育館見てきます。何かあったらすぐ来てくださいよ」


テレパシーでも使えない限り、それは無理だって分かってるけど、あたしだって怖いんだからな、というのを言葉の裏に込める。


どうせあたしが志願しなくても、任されていた任務に違いない。


誰かに付いてきてもらおうかと思ったけど、藤原は使いものにならないし、そろそろ他の部活が終わる時間だから鍵のチェックもしなきゃならない。


しょうがなかろう。


「はるちゃん、無理しないでね」


「分かってますよぅ」


「ヘマするなよ」


「熱射病で寝てるやつに言われたくないな」


「情報持ち帰ってこい」


「それ心配でもなんでもないじゃないですか!」


あたしを心配してくれているのかいないのか、よく分からない3人に見送られ、あたしと理香さんは旧体育館に向かった。
< 21 / 75 >

この作品をシェア

pagetop