幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜
*
「ふふふ、それで私を幽霊だと勘違いしたの?」
「お恥ずかしい限りで」
幽霊───もとい日菜子先輩の笑い声に、あたしはいたたまれなくなって頭を垂れる。
日菜子先輩は委員会で理香さんから伝言は聞いて、自主練をするためにここに戻ってきたのだという。
脅かすつもりはなかったんだけれど、と日菜子先輩はさらに笑う。
「衣装も着てらっしゃったから、本気でこの世の人じゃないかと」
「これ?」
日菜子先輩が細い指で釣り上げた裾は濃紺を基調に細かいレースが施され、立ち上がるとふんわりとしたAラインが印象的な衣装。
「すごいよね、30年くらい前に部員が手作りしたんだって」
「手作り!?」
「私も初めて聞いた時はびっくりしたの。こんな細かいのを作れる人がいるんだって。本来なら衣装がやるらしいけど、その代は人数が少なかったらしくて。初めてヒロインの嵐に選ばれた子が一生懸命作ったって代々伝わってるよ。満島のどかさんだったかな」
「へぇ……」
今練習してる演目は『青嵐』だって岩橋さんが言っていたから、これが『青嵐』の衣装なんだろう。
すごいの一言に尽きる。
あたしなんて家庭科の単位ギリギリだから、一生かかったって作れないだろうなぁ。
「この衣装着てるってことは、日菜子先輩もヒロインやるんですか?」
「一応、ね」
そう言って、日菜子先輩は舞台上に上がる。
体育館は息が苦しいほど蒸し暑いのに、日菜子先輩の所作はまるで水が流れるみたいだった。
「ふふふ、それで私を幽霊だと勘違いしたの?」
「お恥ずかしい限りで」
幽霊───もとい日菜子先輩の笑い声に、あたしはいたたまれなくなって頭を垂れる。
日菜子先輩は委員会で理香さんから伝言は聞いて、自主練をするためにここに戻ってきたのだという。
脅かすつもりはなかったんだけれど、と日菜子先輩はさらに笑う。
「衣装も着てらっしゃったから、本気でこの世の人じゃないかと」
「これ?」
日菜子先輩が細い指で釣り上げた裾は濃紺を基調に細かいレースが施され、立ち上がるとふんわりとしたAラインが印象的な衣装。
「すごいよね、30年くらい前に部員が手作りしたんだって」
「手作り!?」
「私も初めて聞いた時はびっくりしたの。こんな細かいのを作れる人がいるんだって。本来なら衣装がやるらしいけど、その代は人数が少なかったらしくて。初めてヒロインの嵐に選ばれた子が一生懸命作ったって代々伝わってるよ。満島のどかさんだったかな」
「へぇ……」
今練習してる演目は『青嵐』だって岩橋さんが言っていたから、これが『青嵐』の衣装なんだろう。
すごいの一言に尽きる。
あたしなんて家庭科の単位ギリギリだから、一生かかったって作れないだろうなぁ。
「この衣装着てるってことは、日菜子先輩もヒロインやるんですか?」
「一応、ね」
そう言って、日菜子先輩は舞台上に上がる。
体育館は息が苦しいほど蒸し暑いのに、日菜子先輩の所作はまるで水が流れるみたいだった。